2013年1月16日、韓国の鉄鋼大手、ポスコは権五俊(クォン・オジュン)技術部門長(63=社長)が3月14日の株主総会を経て会長(CEO=最高経営責任者)に就任すると発表した。李明博(イ・ミョンバク)政権下で就任した鄭俊陽(チョン・ジュンヤン)会長(65)は任期を2年残して退任し、「政権交代ごとにCEOが交代する」というポスコのトップ人事を繰り返してしまった(JBpressの2013年11月20日付記事「ポスコ会長も任期を残して辞任表明」参照)。
ポスコが次期会長を発表したこの日、東京では資本・業務提携先の新日鉄住金も4月1日付で進藤孝生副社長(64)が社長に就任すると発表した。ここ数年、特許紛争を抱えるなど必ずしも良好ではない両社の関係が、トップ交代を機に今後改善するのかにも関心が集まっている。
またしても迷走したトップ人事
「何よりもポスコを国民から尊敬される企業にしたい」。権五俊氏は内定後に韓国メディアにこう抱負を語った。シェアや利益目標を語ることが多い韓国企業トップの中では新鮮な第一声だった。
それにしても今回もポスコの会長人事は迷走した。鄭俊陽会長は2009年3月に就任して、2012年3月には任期3年の会長職に留任したばかりだった。ところが、2013年2月に朴槿恵(パク・クネ)政権が発足すると周辺が騒がしくなってきた。
「前政権の後押しを受けて会長に就任したのだから政権が交代すれば辞任するのは当然だ」という声が政界から出た。ポスコは完全民営化しており本来は「政府の干渉」は受けなくてもよいはずだ。だが、税務調査を受けるなどの「圧迫」もあり(政府は税務調査と人事は無関係だと繰り返している)、鄭俊陽会長は2013年11月に「2014年3月の株主総会で退任する」ことを表明した。
次期会長候補には様々な名前が挙がった。ほぼ同じ時期に会長が退任してひと足早く後任選びが始まったKTは、サムスン電子の半導体部門社長出身者を会長に選出した。
ポスコについても「経営刷新」のためには外部から登用すべきだとの声もあった。2012年の大統領選挙期間中に朴槿恵候補のブレーンとして「経済民主化」を唱えた学者、元与党代表など何人かが候補に挙がった。
ただ、「鉄鋼業界は激しいグローバル競争にさらされてポスコの業績も悪化しており、専門家がふさわしい」という声に次第に収斂されていった。
政治色のない研究畑出身者選出でひとまず無難な決着
ポスコ内部では何人かの候補者がいた。そのうち、当初最有力だったのがソウル大金属学科を卒業して光陽製鉄所の所長を務めた現職の社長だった。鄭俊陽会長の「意中の人物」とも言われたが、逆に「会長に近すぎる」などの理由で外れた。
新会長に就任する権五俊氏も、ソウル大師範大学(学部)付属高校出身で「鄭会長の高校の後輩で、意中の人物の1人だった」という。