オーレリーはパリから西に約2時間の、フランスで6番目に大きい都市ナントに住んでいる。風呂敷講座をナントや近隣で定期的に開き、先ほど見たようにパリにも出張し、そのほかの都市でも要望があれば風呂敷の講座を開く態勢をいつでも整えている。

参加者の様子を見つめるオーレリーさん。このちりめんの風呂敷は「美しくて、手ざわりも特別で好き」とお気に入りの一枚

 オーレリーは、ギメ東洋美術館に大きなスーツケースや風呂敷バッグを携えて来ていた。何枚もの風呂敷や、靴箱など包む物を持参しているのだ。その荷物に驚く私を見ながら「いつもこうなんですよ。すごい荷物です」とニッコリ。この風呂敷大使はどこで教えるにも、こんな荷物を喜んで抱えて出かけていくのだ。

 彼女が風呂敷のことを知ったのは約10年前、日本人の先生の下で茶道を習ったときだった。細かな茶道具を持ち運ぶのに、みな帛紗(ふくさ)ばさみを使っていたが、風呂敷も時々使った。それで「こんな便利な物があるのだ」と開眼した。

 オーレリーは先生に風呂敷の包み方を2~3教えてもらった。その後は、本やインターネットで情報を探して、とにかく練習を繰り返して独学で様々な折り方を身につけた。

フランスでエコロジーの意識を高めたい

 風呂敷を広めたいと思ったのは、やはり環境への配慮からだった。フランスでもエコライフへの関心が高まってきている。でも、例えばパリではまだまだ積極的なエコライフへの姿勢は浸透していない。

熱心に取り組む男子。テクニックを覚えれば誰でも簡単に風呂敷を使える

 風呂敷1枚を使うことで、何十枚ものプラスチックバッグや紙のバッグを節約できる。それを知ってほしいのだ。

 オーレリーはテレビに出演したり、雑誌に登場したりとメディアを活用してアトリエ・ドゥ・フロシキの存在、そして風呂敷のことを一生懸命に伝える日々を送っている。

 最近の大きなプロジェクトは、風呂敷の便利さを紹介したビデオ作製の指導だった。これは、ナントの中学生たちが手掛けた。風呂敷をテーマに物語を作って演じ、撮影、編集した(ビデオはこちら)。

 オーレリーは風呂敷の歴史から包み方までを子どもたちに教え、衣類のリサイクル所も一緒に訪ねた。リサイクル所にあった古着から風呂敷も自作した。

 ナントは、実はエコの意識がフランスの中でもとりわけ高い町として知られる。今年で4度目を迎えた優れた環境づくりを実践している都市に贈られる賞「ヨーロピアン・グリーン・キャピタル(the European Green Capital)」に、2013年の今年、堂々と選ばれている。