(写真:バイナイト・スポーツ提供)

 子どもの頃、夏休みにキャンプに行って、友だちと暗闇の中でおしゃべりすると、いつもよりも気分が高揚して、ついつい秘密を打ち明けたくなってしまった記憶はないだろうか。遊園地のお化け屋敷は、「アトラクション」だと分かっているのに、なんだかゾクゾクして、大きな声を上げたくなってしまう。暗闇には、特別な力があるのだ。

 東京では、暗闇の中で、目隠しをしてフルコースの食事をするイベントが話題を呼んでいるそうだが、フランスでは、暗闇の中でバドミントンやバレーボールをする不思議なイベントが静かなブームとなっている。

 もちろん、真っ暗闇の中で、ボールも相手の姿も見えなければゲームにならない。でも、顔やウェア、ボール、ラケットに蛍光塗料を塗り、紫外線(UV)ライトを点けると、暗闇の中に人の姿が怪しく浮かび上がる。そう、まるで、レイブパーティーのような興奮の中で、悲鳴と歓声を上げながらスポーツを楽しめるのだ。

ビジネススクールの同級生3人で起業

バイナイト・スポーツを創業したビジネススクールの同窓生3人。中央が代表のロマン・ベルランさん

 パリ郊外のセルジー・ポントワーズ市のバイナイト・スポーツは、ロマン・ベルラン、ガエル・ロドリゲス、ギヨーム・バタールの3人がビジネススクール高等経営専門学校(ESG)の在学中に始めたスポーツイベント会社。暗闇の中で、パーティーではしゃぐようにスポーツができる新しいコンセプトのイベントの企画運営をしている。有名私立学校や、企業、市や町など自治体主催のパーティーにもひっぱりだこ。パリのディズニーリゾートでもイベント実績がある。

 会場の設営には少なくとも20メートル×40メートルの広さが必要だ。天井の高い体育館や宴会場のような場所を確保するのが望ましい。窓がある場合には暗幕をかけて完全に遮光し、UVライトを据え付ける。

(写真:バイナイト・スポーツ提供)

 次は「化粧」だ。会場全体がノリノリで楽しむためには、競技に参加する人だけではなく、観戦者も顔に蛍光塗料を塗る。ただ、のっぺりと塗るだけではつまらないので、スタッフが、お祭りの時のようにユーモアたっぷりの顔に仕上げていく。化粧コーナーを設置して、参加者が鏡を見ながら自分で好きなようにペイントする時もある。そうすると、みるみるうちに参加者のテンションが上がってくる。スポーツパーティーの始まりだ。

 バドミントン、スピードミントン、バレーボール、サッカー、フィットネスなど、誰でも気軽に参加できるようなスポーツをする。暗闇の中でのスポーツに慣れている人などいないので、先頭に立ってインストラクターの役割をするのも、スタッフの重要な役割だ。うまく先導して、参加者に盛り上がってもらうのが成功の秘訣。