思えば、民主党政権が誕生したばかりの頃は、思い切りのいいスローガンがいくつも乱れ飛んだ。「普天間基地の国外移転」は言うに及ばず、「二酸化炭素の25%削減」もそうだったし、「東アジア共同体構想」というのもあった。
打ち上げ花火を上げておしまいの日本、無言実行の中国
この3つだけでも新政権に期待を抱かせるに十分な内容だった。ただ、残念ながらそれらはすべて打ち上げ花火を上げただけに終わってしまい、今となっては跡形もなくなった。
どれもこれもすぐに実現できるものではないのだから、結果がすぐに出なくても道筋を示してくれるだけでも価値はあったと思うのだが、それもなかった。残念でならない。
一方、お隣の国の中国の場合、鳩山由紀夫・前首相のような派手なプロパガンダは全く掲げず、いや、それとは正反対に静かに、できるだけ目立たないようにしながら、着実に手を打っている。
例えば、鳩山前首相が打ち出した「東アジア共同体構想」につながる、アジアに世界的な決済通貨を作ろうという思い。
大国意識が特に強い中国の場合には、周辺の国に働きかけて、アジアの共通通貨を作ろうというのではなくて、人民元を決済通貨にしたいという野望が恐らくあるに違いない。
10年後に潮目の変化に気づく
その野望の一端を紹介したのがこの記事「北京・ミンスク決済同盟」である。非常に些細な“事件”であり、大手のメディアもほとんどフォローしていない。
しかし、もし10年後、あるいは20年後になって歴史を振り返ったら、ああ、あの時に始まっていたんだなと、小さいながらも明らかに歴史を変える潮目の変化を浮き彫りにした記事ではないだろうか。
中国の通貨、人民元を近い将来に世界の基軸通貨にしたいとの野望が、具体的な形として見え始めたのである。
西にポーランド、東にロシア、南にウクライナ、北はリトアニア、ラトビアというバルト3国に接するベラルーシという国がある。アレクサンドル・ルカシェンコという「欧州最後の独裁者」と呼ばれる大統領が率いる国である。
中国はこの国との貿易に関して、ドルやユーロなどの決済通貨を使わずに、お互いの通貨で決済する条約を結んだのである。