米アマゾン・ドットコムが提供しているサービスに、誰でも自分の著作物を電子出版できるという「キンドル・デジタル・テキスト・プラットフォーム(キンドルDTP)」がある。
2007年11月の電子書籍リーダー端末「キンドル(Kindle)」の発売と同時に始めた無料のセルフサービス型電子出版サービスだ。ユーザーはパソコンで同社のウェブサイトにアクセスし、詳細情報を入力後、コンテンツをアップロードする。
すると、その電子書籍がアマゾンのサイトで販売され、コンテンツが売れるとユーザーに印税が支払われる。販売価格も0.99ドルから200ドルの範囲でユーザーが自由に決められる。
作者への還元率を70%に拡大
この印税率はこれまで35%だったがアマゾンは6月30日、これを70%に引き上げるオプションを用意したと発表した。
70%の印税率を適用する場合は、販売価格を2.99~9.99ドルの範囲内にし、もし同じタイトルの紙の書籍で販売されている場合、その最安値の8割以下にしなければならないといったルールがある。
また印税は、販売価格から電子配信にかかるコストを差し引いた金額から計算される。このコストはコンテンツのデータ容量1メガバイト(MB)に付き15セントだ。
アマゾンによると、平均的なコンテンツのサイズは368キロバイト(KB)なので、配信コストは約6セントになるという。
例えばコンテンツの価格を8.99ドルにした場合、35%の印税では3.15ドル、70%では6.25ドルを受け取れることになる。「紙の書籍で作者が受けとる印税は7~15%、新たなオプションはこれを大きく上回り、収益増大のチャンスが広がる」とアマゾンは説明している。
このサービス、残念ながら現在対応している言語は、英語、ドイツ語、フランス語のみで、日本語はない。しかしこれらの言語でコンテンツを作成できれば、キンドル向け電子コンテンツの販売サイトを通じて全世界の読者に作品を販売できることになる。
アマゾンの言うように、ビジネスチャンスが広がっているのかもしれない。70%の印税率が適用されるのは今のところアマゾンの米国サイトで販売されるコンテンツに限られるが、それでも大きな市場と言えるだろう。
紙の書籍の出版に成功した米国の小説家
アマゾンの電子書籍コンテンツは販路が多い。同社の電子書籍リーダー端末やウェブサイトから購入できるようにしているほか、パソコン向けのソフトも無償配布している。
またアップルのアイフォーンなどのスマートフォン、タブレット端末のアイパッド用のアプリも配布している。ユーザーはこれらのどの機器からも購入でき、一度購入したものは複数の機器にダウンロードして楽しめる。