サッカー・ワールドカップ南アフリカ大会は、日本チームの予想を上回る奮闘ぶりに沸いている。6月29日に行われたパラグアイ戦では惜しくも初のベスト8を逃してしまったが、大会前の評判から考えると、見違えるような戦いぶりである。
南アフリカのダーバンはインド人の多い街
大会前のテストマッチでも調子が上がらず、暴君だの無能だのその采配に罵詈雑言を浴びせられていた岡田監督は、今や名将へとその扱いが転じている。
ところで、日本チームがオランダと戦った街ダーバンはインド洋沿岸の商業・観光都市である。人口の多くを占めるのはズールー族などの黒人だが、インド人も多数暮らす活気ある街だ。
そんなインド人街を歩けば、インディアン・ポップスの洪水やマサラの香りに包まれ、行き交う多くのインド人の姿に、自分がアフリカにいることを忘れてしまう。
社会の混沌ぶりと宗教に根ざした歴史ある世界を垣間見ようとインドを訪れる日本人は多いが、あまりの乱雑さと不衛生ぶり、そして何よりも物乞いの多さにカルチャーショックを受け、二度と行く気になれない、という声も少なくない。
しかし、混沌はインド社会の本質。いくらIT産業を中心として経済的躍進を遂げても、社会の根底にある因習が整然とした世界をつくり上げることを拒み続けている。
憲法では禁止されたカースト制度だが・・・
よく米国はインドを評して「世界最大の民主主義国家」とおべっかを使うが、それは中国を牽制してのこと。真の意味での民主主義をこの国で実現することは、まず不可能である。というのも、カースト制という根深いしがらみがあるからである。
今では憲法で禁止され、都市部では解消傾向にあると言うが、人々は生まれた時から「ヴァルナ」と呼ばれる身分制度によって分けられ、原則、決まった職種にしか就くことができない。
憲法云々という以前に、ヒンドゥー社会の根幹でもあるため、根絶するとなると宗教と対立してしまうのだから厄介だ。