来る9月22日は、ドイツの連邦議会の総選挙だ。CDU(キリスト教民主同盟)のアンゲラ・メルケル首相は、すでに8年間政権を握っている。彼女の連投がさらに4年続くか、あるいは、SPD(ドイツ社民党)の首相候補ペール・シュタインブリュック氏が政権を奪取するか?
白熱の激戦と言いたいところだが、それは正しくない。
人気だけを見れば、現在のCDUは抜群だ。中でもメルケル首相の人気は、シュタインブリュック氏の追随を許さない。アンケートをすると、メルケル氏に首相を続投してほしいという声が、SPDの支持者からも挙がるほどだ。
一方、SPDの人気はずっと低迷しており、今やCDUと比べるべくもない。かつてヴィリー・ブラント氏やヘルムート・シュミット氏などといった著名な政治家を輩出した国民政党としては、惨めの限りだ。
ただ、強いはずのCDUの不運は、現在の連立相手であるFDP(自由民主党)が壊滅状態であること。つまり、次期政権を取るためのしっかりした連立相手がいない。CDU一党では、残念ながら過半数を取れない。
SPDがそれに乗じて、緑の党やら左派党を巻き込んで連立を達成すれば、国民の願いに反して、シュタインブリュック氏が次期の首相になる可能性がある。まさに連立の罠である。
激しいバトルが繰り広げられた総選挙前のテレビ討論
さて、9月1日の日曜日、総選挙に先立ってテレビ討論が行われた。メルケル首相とシュタインブリュック首相候補が、カメラの前で4人の質問者と対峙する。
4人の質問者は、比較的お堅い国営放送局のARDとZDF、それから全くお堅くないRTLとProSiebenという民放からそれぞれ1人ずつ。そして、その4人の司会者が次々に放つ質問に、メルケル首相、あるいはシュタインブリュック氏が指名され、答えていく。
始まりは夜の8時半で、90分間。規則はきっちりと決まっている。最初の質問はシュタインブリュック氏に投げかけられ、最後はメルケル首相が締めくくる。それぞれの質問に対する答弁の時間は90秒で、最終的に、両者の発言の時間がピッタリ同じになるように配慮される。
討論の最中、下に秒数がカウントされるので、スポーツの試合を見ている気分だ。討論自体も、何となくスポーツに近い。さすがに筋力はいらないが、知性と機転と論理性、その他、記憶力や瞬発力がオールラウンドに試される過酷な試合だ。
この晩、テレビ討論が始まって30分後、ツイートの数が17万3000件に上った。それだけの数の人間が、ライブでこの討論を見ていたということになる。私のように、後で見た人間を入れれば、その数はさらに増えるだろう。ドイツ人は、政治好きな人たちだ。