北米報知 2013年8月8日33号

 シアトルダウンタウンで7月末、州道99号線のトンネル建設工事が始まった。世界最大のシールド掘進機が投入され、シアトル地下を約2マイル掘り進む。重機は日本製、また工法も日本生まれだ。トンネル工事をはじめ、シアトルの交通に欠かせない日本の技術に目を向けてみる。

シアトル土壌に最適、日本生まれの技術

シアトルダウンタウンのトンネルを掘る世界最大のシールド堀進機「バーサ」。写真提供:ワシントン州運輸局

 アラスカンウェイの高架橋老朽化による大規模トンネル建設工事。要となる掘削を担うのが日立造船製シールド掘進機の「バーサ」だ。

 世界最大径のカッターヘッドの57.5フィートを誇る重機の重さは約7000トン。シールド機本体と3つの後方台車を含め全長326フィートとなる。

 日立造船の重機は現在工事中のワシントン大学へ延伸するライトレール路線にも採用されている。

 東京湾アクアライン建築での口径46フィートの大型シールド掘進機に加え、中国やシンガポール、インドの地下鉄で受注実績がある。これまでに口径33フィート以上の大型シールド掘進機は約20機を納入している。

 日本の首都高速道路株式会社のウェブサイトによると、シールド工法は1818年、フランス人のブルネルの手掘り式シールド工法の発明から始まる。

 日本トンネル技術協会の鈴木明彦技術部長によると、泥土圧シールド工法は1974年に大豊建設株式会社が開発した技術で、最初の泥土圧シールド工法による工事は76年に東京都葛飾区青戸4、5丁目付近枝線の下水道工事だった。

 泥土圧シールド工法は、トンネルの内側をしっかりと支えながら円筒状重機の先についたカッターヘッドで掘り進める。ベントナイトという粘土物質をトンネルの外周に詰め込み地盤沈下を防ぐのが特徴で、掘削を進めながらセグメントと呼ぶ分割された鉄筋コンクリートをはめ込む。掘削とセグメントのはめ込みを繰り返し、トンネルは建設される。

 日本のシールド工法が海外より優れ、高い技術へ発展した理由は、沖積地盤、高い地下水の問題、都市部の狭い道路下への布設、道路に沿った急曲線、近接施工、騒音、振動など、日本列島特有の厳しい条件に適応したためという。