お酒は多くの人が飲んでいるもの。そんなお酒が体にどう影響するかを、改めて考えている。数々の疑問に答えてくれるのは、洗足メンタルクリニック院長の重盛憲司氏だ。精神科医として長らくアルコール依存症患者などへの治療に携わってきた。アルコール全般への見識は広くて深い。
前篇では、お酒で酔っぱらうメカニズムとともに、巷で言われている「“ちゃんぽん”で悪酔い」「アルコールで肥満」「お酒の前の牛乳は効果あり」といった説の真相を聞いた。普段から接するお酒についても、「実はそうだったのか」と思えることは多くあるものだ。
後篇では、引き続き重盛氏に、アルコールが体に与える影響を聞いていきたい。「酒は百薬の長」と言われる一方で、「命を削る鉋(かんな)」とも言われる。お酒のもつこの二面性をどのように捉えて、どのようにお酒に接していけばよいのだろうか。
動脈硬化予防、食欲増進、リラックス効果・・・
──お酒を飲んでアルコールを体に摂り込むことの良い影響にはどのようなことがあるでしょうか?
重盛憲司氏(以下、敬称略) 身体的なことで言いますと、適量のお酒を飲むことによって動脈硬化を抑えられるということがあります。動脈硬化がもとで起きる心筋梗塞の発症リスクが減ったという話もあります。これらは、アルコールそのものよりも、お酒の種類によって含まれているポリフェノールの作用が大きいと思います。ブドウの皮の部分を含む赤ワインなどには、ポリフェノールが多く含まれています。
──食欲をそそるという点では「食前酒」などもありますね。
重盛 ええ。お酒の食欲増進効果は昔から言われています。実際、国内の医薬品の品質などを定めた基準「日本薬局方」には「ブドウ酒」の記載があり、食欲増進の効能が書かれてあります。
また、イギリスでは、アルコール度の低いビールに砂糖を入れたものを子供に飲ませる習慣もあると聞きます。麦芽が多く栄養価が高いため勧められてきたのです。