ジャーナリスト、池上彰氏の人気も影響しているのだろうか。最近、分かりやすく伝えるための話し方や書き方に関心が集まっている。
分かりすく伝える方法を解説した本も数多く出版されている。この7月に経済ジャーナリストの木暮太一氏が上梓した『伝え方の教科書』(WAVE出版)も、その流れの中の1冊に位置づけられるだろう。
だが、本書を他の類書と同列に論じることはできない。木暮氏の「伝える技術」にかける情熱が並外れているからである。
木暮氏は中学生の頃から「どうすれば他人に分かりやすく伝えられるのか」を考え、その方法を模索してきたという。大学生時代には自らの方法論をもとに、経済学の基本を分かりやすく解説した『TK論~気軽に始める経済学~』という手製の冊子をつくった。学生たちから大好評を博し、5万部が売れたそうだ。本書は、木暮氏がこれまで約20年をかけて磨き上げてきた「分かりやすく伝える技術」の集大成である。
本書を読むと、木暮氏が「伝える技術」を決して小手先のテクニックとは捉えていないことがよく分かる。上司や部下との会話、メールでの連絡、プレゼンなど、ビジネスの様々な場面で役立つだけでない。分かりやすく伝えるためには、「相手を知って、相手になりきる」「頭で考えるのではなく身体を使って相手と同じ経験をしてみる」ことが欠かせないと説く。これはビジネスのみならず、社会全般における他人との接し方の極意だと言えよう。
現在、書店で本書を手に取り、購入しているのは主にビジネスパーソンである。だが木暮氏は、本当に読んでほしいのは学校の先生だという。つまり、この技術を学校で教えてもらい、子供たちに身につけてほしいというのだ。
確かにいまの教育に欠けているのは、こうした技術を教えることかもしれない。社会に出たとき、情報の洪水に溺れることなく、情報を的確かつ分かりやすく他人に伝える能力は不可欠とも言えるだろう。子供のときから「伝える技術」を学ぶ意義、また学び方などについて木暮氏に聞いた。
分かりやすく伝えられるようになると頭が良くなる
──なぜ子供たちに「伝える技術」を身につけてほしいのですか。
木暮太一氏(以下、敬称略) まず、分かりやすく伝えるのはとても楽しいということです。