日本で年間1億円以上を受け取る上場企業役員の個別報酬開示が始まった。欧米に比べて社員と社長の給与格差が小さいことが日本企業の美徳とされてきた。しかし、海外投資家は、安過ぎる役員報酬の会社を敬遠する傾向すらあるという。単に安ければいいわけではない。水準が妥当か、役員報酬の決定方法に透明性があるか──を株主から問われている。
財界はプライバシー侵害と個別報酬開示に反発
カルロス・ゴーン日産自動車社長は8億9000万円、ハワード・ストリンガー・ソニー会長は4億1000万円+4億円のストックオプション(自社株を購入できる権利)。これまで推測でしかなかった経営者の高額報酬が次々に明らかになっている。
2010年3月末、金融庁は内閣府令を改正。従来は役員報酬の総額だけを開示すればよかったが、改正によって上場企業は1億円以上を受け取った役員の名前と金額、その内訳を2010年3月期の有価証券報告書(有報)で開示しなければならなくなった。
金融危機を契機に、株主による経営監視の目が世界的に厳しくなっていることに配慮した措置だ。米国は各企業の報酬額上位5人を公表。英独も個別開示を義務付けている。
経済界は「プライバシーの侵害」「報酬総額の開示だけでも高額化は抑止できる」などと一斉に反発。だが亀井静香金融担当相(当時)は「(報酬に値する)仕事をしていると思う人は胸を張っていればいい」と、導入を強行した。
6月中旬から本格化した株主総会では、報酬に関する質問が続出。日産とソニーは有報開示に先立つ株主総会でストリンガー氏らの報酬を開示。みずほフィナンシャルグループ、ヤフー、東芝などの大手企業でも「1億円プレーヤー」が明らかになっている。
日産は業績不振を理由に前期は無配。ソニーの期末配当は当初の予定額を下回った。ストリンガー氏の報酬額に対し、ソニーは、優秀な人材確保のために必要な額だと説明するが、株主からは「納得がいかない」との声も上がる。