ビールに比べてドイツワインの魅力は日本ではあまり知られていないかもしれない。だが、国内には13のワイン生産地域があり、ライン河の本流とその支流沿岸に散在するそれぞれの地域特有の魅力的なワインを産出している。

 なかでも、温暖な気候に恵まれたラインヘッセン地方やプファルツ地方は、ローマ時代からぶどうが栽培されていた伝統的なワイン生産地だ。昔から白品種リースリングの質の良さで知られる地域で、上質のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーなどフランスの赤品種も栽培され、成果を収めている。

 70年代頃まで、ドイツワインは大量生産というマイナーイメージがあったものの、今では高品質、こだわりのワインを造り出す若手醸造家たちによって、上質ワインを生み出す地域として注目を浴びている。

 今年6月、オバマ米大統領がベルリンを訪問した際、メルケル首相主催の歓迎晩餐会で供されたワインもこのプファルツ地方を代表するワインだ。

 「50年前、ケネディ大統領訪独の際に供されたリースリングワインに匹敵するようなワインを飲んでみたい」と言うオバマ米大統領の要望を受けて、4種類のプファルツ産ワインが選ばれた。

 この晩餐会に2種のワインを提供したワイナリー「SCHNEIDER」の主、マルクス・シュナイダー氏(38歳)に話を聞いた。

チャレンジ精神旺盛な若手ワイン醸造家

マルクス・シュナイダー氏(以下、特記のないものは著者撮影)

 マルクスさんは、ドイツワイン街道沿いの街エラーシュタット(Ellerstadt)で活躍する若手ワイン醸造家。1994年からワイン造りを始め、現在、従業員10名とともに90へクタールの土地で年間60万本を生産する。

 ワインの生産比率は白、赤、それぞれ50%。ワイン価格は750ミリリットル入り1本6ユーロ(800円)から20ユーロ(2700円)ほど。

 ぶどう品種は、リースリング、ブルグンダー、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなど約20種類を地元エラーシュタットと近郊のヴァイゼンハイム・アム・ベルクで栽培している。

 シュナイダーワインのボトルを手に取って見ると、従来のワインボトルの印象とちょっと異なる。まず、ワインの名前がとってもユニークだ。

 例えば、オバマ米大統領歓迎晩餐会のメインディッシュに供された2012年ソーヴィニヨンブランKAITUIは、ニュージーランド産ぶどう品種を栽培し醸造された白ワイン。KAITUIは、ニュージーランドのマオリ族語から用いたもので「シュナイダー(仕立屋)」という意味。