今回の参議院選挙への米国メディアの反応は、まずは、安倍晋三首相が率いる自民党が地すべり的な大勝利を飾ったことへの歓迎であり、そして、例によって「普通の国家」を目指そうとする安倍氏の憲法改正などへの主張に対する屈折した態度がまぶされたものであった。

 安倍氏が日本国民の揺るぎのない支持を得たことや、日本の政治が近年では珍しい安定を得たことは、米国のオバマ政権が内外ともに衰退や破綻に直面しているのとは対照的であり、米国マスコミのいつもの高みから見下ろすような日本診断も歯切れの悪さが目立っていた。

 日本の参議院選挙での自民党の安倍政権の大勝利は「ウォールストリート・ジャーナル」「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・タイムズ」の主要3紙により7月22日付朝刊でそれぞれ報じられた。もっとも3紙ともトップ級のニュースではなく、1面の片隅にちらりとニュースの冒頭を載せて、残りは中の面で詳しく伝えるという扱いだった。

米国政府高官たちは日本と中韓との関係悪化を心配

 ウォールストリート・ジャーナルのニュース記事は、「投票は安倍に新しい戦後・日本へのビジョンを求める権限を与えた」という見出しで、今回の地すべり的な勝利が安倍首相に「野心的な成長行動予定と力強い外交政策を追求するためのより多くの自由を与えた」と総括していた。

 このニュース記事は、安倍首相の「3本の矢」という表現で象徴される経済政策が成果を生み、国民の圧倒的な支持を得たことを強調したうえで、以下のようにも述べていた。

 「安倍氏の勝利の意味は国内経済をはるかに超えるだろう。ナショナリスティックな見解とタカ派的な外交スタンスの安倍氏は、今回の選挙によって拡大された国民の信託と、より安定した政治環境とを、彼が第1期の首相時代から大切にしてきた政策目標の追求に使うことは明らかである。安倍氏は日本の『戦後レジーム』を終結させ、日本を『普通の国家』にしたいと言明してきた。その結果、第1期の首相の際には、日本の戦争侵略を受けた近隣諸国の怒りを引き起こし、米国政府の高官たちには日本と中国、韓国との関係悪化への心配を抱かせることとなった」

 「(安倍氏が求める)この種の変化は日本の自衛隊に課せられた制約の一部をなくすための軍事力の増強、戦後の消極平和主義の憲法の改正への試み、などを含んでいる」

 上記のような論評は、このところ米国の主要メディアによる日本報道の決まり文句のようになっている。ほとんどは一握りの記者個人の見解だが、その背景には、もちろん米国の日本研究学者や新旧含めての政府高官の一部の意見も作用しているだろう。