「経済民主化関連法案はだいたい国会を通過した。これからは投資をして経済を発展させる方向に努力しなければならない」。2013年7月10日、青瓦台(大統領府)での韓国メディア幹部との懇談で朴槿恵(パク・クネ)大統領はこう語った。成長率や輸出が鈍化する中で、韓国政府が「成長」に向けて舵を切ったとの見方が強い。
「経済民主化路線」に不満を強めていた産業界は、ひとまず歓迎している。だが、経済の先行きはなお不透明で、「強いリーダーシップ」を政府に求める声は依然として根強い。
この日は、韓国の主要メディアの論説室長や解説委員長を招いた大統領との懇談会だった。産業界から「新政権は経済民主化に熱心だが、投資や雇用拡大が後手に回っている」との声が出ていたことを踏まえ、「経済民主化は一段落したと見ているのか」との質問に対して朴槿恵大統領が答えた。
「経済民主化」は朴槿恵政権の経済政策の重要テーマの1つだった。「大企業や財閥だけが大きくなり、経済の両極化が加速した」との世論の批判に答えて、新政権は発足以来立て続けに手を打ってきた。
大企業による中小企業圧迫の摘発、財閥のオーナー家による不正行為の厳格な摘発や処分、大企業や財閥の闇雲な拡大に対する規制・・・朴槿恵政権は大統領選挙の公約に掲げてきた内容を次々と実行してきた。
「約束したことは必ず守る」。朴槿恵大統領の政治スタイルは時に財閥、特にオーナー経営者を震撼させてきた。
国税庁が財閥オーナー家などに送った「案内状」
例えば、国税庁は7月初めまでに、1万人以上に「贈与税納税対象者である可能性がある」という内容の「案内状」を発送した。
韓国メディアによると、サムスングループや現代自動車グループのオーナー会長の長男(いずれも副会長)など韓国を代表する財閥のオーナー家関係者が多く含まれているという。
今回の「贈与税」とは何か。財閥のグループ内取引にメスを入れようという狙いだ。多くの財閥は、オーナー家が保有する情報システム、物流、広告会社などにグループ系列企業の業務を集中発注する。
グループ内取引を事実上独占できるのだから、こうした情報システムや物流会社は「超優良企業」になる。オーナー家が保有するこれらの会社の株式の価値も跳ね上げる。
政府は、こうした行為に対して「贈与税」を厳格に徴収することを決めた。オーナー家など特定の個人がこうした企業の株式を保有して資産を増やした場合、グループからの贈与を受けたと見なすのだ。
少し無理筋のようにも見えるが、財閥グループ内の特定企業への業務の集中発注にはこれまでも批判が強かった。