国連食糧農業機関(FAO)は、食糧危機対策の一案として昆虫食を提言するリポートをまとめた。昆虫にはタンパク質や脂質が多く含まれ、ビタミン、ミネラルも豊富。牛などの家畜に比べ、はるかに狭い施設で環境負荷も少なく大量飼育が可能、との利点も示されている。
昆虫食は哺乳類の始祖の時代、2億年を超える昔の中生代三畳紀に始まる。そして、我々の祖先たちが農業や牧畜などを始めるまでの狩猟採集生活の中で、大切な蛋白源の1つだったことも、地層に残された糞石などの分析から証明されている。
昆虫食を蔑視する西洋人
世界では今も20億もの人々が1900種類以上の昆虫を食用としているというから、決して珍しい食習慣ではないのだが、特に西欧では、文化的宗教的習慣から、悪食、ゲテモノとのイメージとなり、次第に食べられなくなっていった。
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)には、蛇、蜘蛛、さらにはサルの脳などを食する人々を見てヒロインが卒倒する様がコミカルに描かれているが、これこそゲテモノ食いと蔑視する西洋人の姿でもある。
イスラム圏では羊の脳が普通に料理の素材として使われているし、タイ、カンボジア、ラオスあたりの田舎では、食用の虫ばかりが並ぶ屋台もある。そんなクモやアリ、バッタ、コオロギのから揚げなどは、結構美味。
世界を彷徨していて、随分といろいろなものを口にしてきた私自身の経験では、食べられないほどまずいものはごくわずか。もっとも、韓国のつまみとして日本でも知られている蚕の蛹「ポンデギ」のように匂いがキツく、初めは大変なものもあるのだが・・・。
海のない地域では貴重な蛋白源として、バッタ、ハチ、アリ、ゴキブリ、セミなど、身近で採りやすい昆虫が多く食されてきた。
日本でも、長野あたりでは、今も、ハチノコ、蚕、ざざむしなどが食材として存在しているし、日本の空の玄関成田あたりでも、道端でイナゴの佃煮を容易に買うことができる。
そんなFAOリポートと時をほぼ同じくして、EUの専門機関「欧州食品安全機関(EFSA)」は、12月からの2年間、ネオニコチノイド系農薬3種の域内での使用を暫定的に強く制限することを発表した。近年問題が顕在化しているミツバチ減少との関連が指摘されている農薬である。
2006年秋、米国で全巣箱の3分の1ものミツバチが消えた。巣を飛び立ったまま戻らず、死骸すら見つからないミツバチの大量失踪事件である。謎多きこの現象は「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder=CCD)」と名づけられ、その後も深刻な問題であり続けている。