橋下徹大阪市長が、在日米軍の司令官に風俗業の活用を勧めたという発言は、最悪のタイミングだった。米国防省がこれまでにないほど兵士たちの性的問題にピリピリしている最中に起こったのだ。
一連の問題発言で頑な態度を貫いていた橋下市長は、なぜか米軍に関する発言のみ素直に撤回、謝罪した。また、その後に計画されていた訪米は中止された。
その理由は、ちょうど発言と同時期に米国議会で進行していた、米軍内部の驚くべき性的犯罪の実態報告と関係している。
国防省と軍部があらわにした激烈な不快感は、発言の内容だけでなく、そのタイミングだった。そのため、橋下市長は今後、米国との関係修復が不可能とも思われるほどワシントン界隈で顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったのだ。
以下が、今回明らかにされた軍隊のタブー中のタブー、兵士間の性的犯罪の現実だ。
女性兵士の3割はレイプされた経験がある
軍の歴史と同じ長さで性的犯罪は続いてきたのであろうが、最近まで公になることはなかった。アフガニスタン侵攻とイラク戦争で、これまで以上に女性兵士が前線に送られたことと、2つの戦争が長引いていることが、さらなる軍内部の性的犯罪を増加させていると言われ、女性兵士の3割は性的犯罪の被害に遭ったことがあるという(American Journal of Industrial Medicine)。
国防省によると、2012年には2万6000件の性的犯罪が軍隊内であったと推定されるが、実際に被害者が被害届を出すのはまれだと言う。これまで、被害届を出せばほぼ例外なく昇進に響くことに加え、最終的に軍隊にとどまるのが難しくなるのが通例だったからだ。
2万6000件のうち、実際に被害届が出されたのは3374件。そのうち受理され、軍法廷に持ち込まれたのは238件のみだ。