中国が宇宙で米国に対する軍事態勢を新たに強化し始めた――。

 最近、米国の議会政策諮問機関が報告を発表し、中国のそんな動きを明らかにした。

 中国の習近平国家主席は6月7日に訪米してオバマ大統領との米中首脳会談に臨むが、そうした対米協調の姿勢の背後では、宇宙をも使って対米軍事能力の強化に励むという別の顔もあるということだろう。

 米国議会の超党派の対中政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は5月下旬、「中国のミサイル発射は新たな対衛星破壊能力の実験か」と題する報告を公表した。この報告は委員会全体ではなく一部の専門スタッフにより作成されたというが、もちろん委員会としての承認があっての公表だった。

 この報告は、中国当局が5月13日に四川省の西昌にある衛星発射センターから打ち上げた巨大な弾道ミサイルの意味についての分析である。

 中国側の発表や報道によると、中国科学院の国家宇宙科学研究センターが打ち上げたこのミサイルは長距離観測ロケット「鲲鵬(Kunpeng)七号(KP-7)」だという。その名の「鲲鵬」は、「鲲」という巨大な魚が「鵬」という巨大な鳥に化けたという伝説に由来するとされていた。このミサイルは高空観測用の観測ロケットだと発表された。

 米国側の観測では、このミサイルは高度2万マイルにまでも達し、ミサイルとしては世界でこれまで最も高い弾道軌道に到達したという。

中国は非軍事の科学的な実験だと言うが・・・

 さて、この異様なほど高度に達したミサイルに中国はどのような目的を託しているのか。

 中国側は、高空の自然データを集める非軍事の科学的な実験なのだと宣言する。しかし米国の国防総省では、実はこのミサイルの開発は、新しい衛星破壊兵器(ASAT)の能力を実験するために行われたものと見ているという。前述の米中経済安保調査委員会の報告は、米国側のそうした認識について明らかにしていた。