MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
「夜寝る前に食べると太る」ってよく聞きますよね?
でも、分かっているけど、ポテトチップス、チョコレートやラーメンなど、塩辛いもの、甘いものや高カロリーなものをついつい食べてしまいます。
それで悩んでいるのはあなただけではありません。一般的に私たち人間は誰しも、午前中にはあまり空腹を感じません。ある調査では、欧米人の平均的な朝食は、1日のカロリーの16~18%と報告されています。
また、朝食を食べない人も多くいます。睡眠という長い絶食の後なのに、なぜ朝は食欲がないのでしょうか?
どうしてこってりとした食べ物は、朝からは食べたいと思わないのでしょうか?
一方、夕食は1日の最大の食事で、1日のカロリーの35~36%を摂取します。
私たちの体の中には、概日リズム(Circadian rhythmサーカディアン・リズム)という体内時計があります。その時計が、体温、血圧やホルモンなどのリズムを整えていて、その体内時計が乱れてくると、不眠、疲労、糖尿病や、高血圧などが起こります。
深夜の食欲増と朝の食欲不振にも、その原因として体内時計が関わっていることが、ハーバード大学とオレゴンの研究者らによって雑誌『Obesity』に報告*されましたので、ご紹介させていただきます。
実験では、Forced desynchrony 実験 (強制脱同調実験)と呼ばれる手法が用いられました。Forced desynchrony 実験とは、被験者に24時間周期とはかけ離れた睡眠覚醒リズム(例えば20時間周期や28時間周期)で生活してもらう実験です。
生体時計は24時間から大きく離れた生活習慣には同調できないため、この実験中でも生体時計は約24時間の周期で持続します。この生活を多くは20日ほど続け、その間にさまざまな現象を持続的に記録することで、現象が体内時計に依存しているのか、それとも睡眠覚醒リズムに依存しているのか明らかにできるものです。(参考:『実験医学』羊土社)
*Scheer FA, Morris CJ, Shea SA, The internal circadian clock increases hunger and appetite in the evening independent of food intake and other behaviors. Obesity (Silver Spring). 2013;21(3):421-3.