・最も確率が高いのは、中国が軍事能力を強大にすることによって日本との紛争や競合の案件を、軍事力を実際に使うことなく、中国にとって有利に解決してしまうという事態である。

・特に中国人民解放軍が尖閣諸島をはじめとする日本周辺で空と海での活動を強めることは、政治、軍事の危機を高めることとなる。

・日本周辺での中国対日米同盟の間の軍事力バランスが、絶対的にも相対的にも中国に有利に大きく傾いていくことは確実と見られる。

・中国、米国、日本の3国の軍事力の比較では、今後、日本のごく近くの海と空に限っても、日米同盟側がごくわずかな優位も均衡さえも保っていける可能性は極めて少ない。

・もし中国の経済が破綻し、中国政府が軍拡の代わりに国内安定に対して主要な資源や注意を投入していくという政策を選んだ場合、中国の軍事脅威が大幅に減るという事態も可能性としてはあり得る。

・現在の戦略的構図を根本から変える過激な変化が今後15年から20年の間に起きる確率は低い。だが、日米同盟の大幅な強化による好戦的な中国とのアジアの「冷戦」や、米軍のアジア撤退によるアジアでの中国覇権の確立、さらには日本の核武装の可能性をも含む軍事力強化による日中対立の激化など、可能性はある。

 以上の予測の中で、最も確率の高い事態は、2項目目の「中国が軍事能力を強大にすることによって日本との紛争や競合の案件を軍事力を実際に使うことなく、中国にとって有利に解決してしまう」展開だという。

 当然、まず考えられるのは尖閣諸島の中国による奪取である。軍事力を実際には使わず、つまり戦争は起こさず、なお軍事力の威力によって自国の主張を無理やりに通してしまう、というシナリオだと言える。

 日本側の防衛の現状など見れば、単に「シナリオ」では済ませられない現実味を帯びた見通しである。

 こんな安全保障環境の中で、では日本はどうすべきなのだろう。この点は、さらにこのカーネギー国際平和財団の報告に沿って次回のリポートで伝えたい。