週刊NY生活 2013年5月11日442号
広島原爆の被爆者が5月2日午後、ジャパン・ソサエティーで高校生240人に体験を語った。
原爆投下を命じたハリー・トルーマン米大統領(当時)の孫クリフトン・トルーマン・ダニエルさん(56)や原爆開発に携わった科学者を父親に持ち放射線被曝したシンシア・ミラーさんも加わり、原爆に関する双方の立場から、若者に核のない社会づくりを呼びかけた。
笹森恵子(しげこ)さん(80)は、ケロイド治療で戦後来米して米国人の養女となった。広島在住の李鐘根さん(84)は、今回初めて来米し体験を話した。
ふたりは、原爆投下時の様子や、やけどがひどかったことをつぶさに話し、ともに「今日聞いたことを少しでもいいから誰かに話して」と訴えた。
昨年8月に初めて広島・長崎を訪れたダニエルさんも「2000人以上の被爆者に会って、全員に見聞きしたことを伝えて」と言われて以来、積極的に体験を話していると伝えた。放射線被曝で体調不良に悩んだミラーさんも「父のしたことで痛みをともなった日本人に謝りたい」と涙ながらに話し、涙や恐怖のない未来をつくってほしいと訴えた。
ニューヨーク市内8校から集まった高校生は、熱心にメモをとり、まんじりともせず聞き入っていた。最後は全員総立ちで、苦難を乗り越えて平和の尊さを訴えるスピーカーたちに拍手を送った。
ブルックリンにあるフランクリン・K・レーン高校のゼイクアン・エドウィン君(17)は、「アニメなど日本文化が好きだけど、原爆については投下されたとだけ学習しただけで、その後どうだったか初めて知った」と話した。
4人は、NPO法人ヒバクシャ・ストーリーズ(HS)の招きで4月下旬にニューヨーク入りして、市内9か所の高校などを回り、体験や証言を伝えた。
(小味かおる、写真も)
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