米国のペンタゴン、つまり国防総省が2013年5月冒頭、北朝鮮の軍事力の実態について初めての公式の報告書を発表した。米国議会が新たに成立させた法律によって、国防総省が北朝鮮の軍事力についての調査と分析の報告を毎年1度、作成し、議会に提出することが義務づけられたのだ。米国の議会がそれほど北朝鮮の軍事脅威に懸念を抱いていることの例証だろう。

 報告書は正式には「朝鮮民主主義人民共和国の軍事と安全保障の展開」と題されていた。その中では北朝鮮がわが日本を明確に潜在的な軍事標的として位置づけ、弾道ミサイルの照準を合わせていることが明示された。つまり北朝鮮が日本を軍事面での敵と見て、その攻撃作戦を立てていることが米国によっても証されたということである。

 その重大な軍事脅威に対して、日本は独自では対抗する手段も、抑止する手段も持っていない。米国の軍事力に依存する以外には、有事に対応する軍事手段は持たないという道を自ら選んできたからである。

米韓同盟に挑戦し南北統一を図りたい北朝鮮

 さて、国防総省のこの北朝鮮軍事報告書の要点は以下のようだった。

・北朝鮮は核兵器と長距離弾道ミサイルの開発を進め、韓国への実際の攻撃や挑発を実行することにより、米国にとっても北東アジアでの決定的な安全保障上の脅威となっている。

・北朝鮮は朝鮮半島から米国を追い出すことで南北の統一を果たすという基本の戦略目標は変えていない。

・金正日政権下での北朝鮮は、戦略的な軍事能力を強めて米韓同盟に挑戦し、米韓側の攻撃を抑止するとともに、自政権の戦略や活動をも認知させる意図だったが、その基本は金正恩政権下でも変わっていない。