日銀は2010年6月15日の金融政策決定会合で、「成長基盤を強化するオペ」の詳細を決定した。(景気スピード診断「『本線』から切り離された政策手段」を参照ください:編集部)
供給上限3兆円。政策金利(現在0.1%)を適用し、1金融機関当たりの融資限度額は1500億円。期間1年で、借り換えで最長4年の利用が可能だ。成長基盤の強化につながる融資先として「研究開発」や「医療・介護」など18分野を提示した。まだまだ細目があるが、これ以上詳細を知っても意味がないので、この辺でやめておこう。
5月18日付の当コラム「政治は評価、市場にソッポ向かれた日銀」の中で解説したように、そもそも企業の資金需要は乏しく、金融機関にカネがだぶついている今、「ニーズはないが、ポーズのため」に実施する意味の無い施策なのだ。
しかし、意味のなさを「分かっていない」新聞やテレビがこぞって報道したお陰で、日銀には思わぬ宣伝効果がもたらされた。といっても、その効果も既に出尽くした。8月末の実施を前に使命を終えてしまったオペを、忘れ去られる前に総括しておこう。
成長基盤強化の資金なんて所詮はバーチャル
金融機関はカネ余りでも、このオペをそれなりに活用するだろう。繰り返すが、ニーズがあるからではない。「中央銀行の取り組みには敬意を表して協力した方がいい」(都銀)という大人の判断だ。また、たとえ少額であっても低利で調達できるなら「利用しても損はない」(地方銀行)。なんといっても、金融機関が借りやすいように日銀は「資金使途を考査でチェックしない」(幹部)ことを決めている。
「使途をチェックしない」こと自体、成長基盤強化のお題目がバーチャルであることを象徴している。もとより提供する資金はリスクマネーでも何でもなく、通常オペと同じものだ。少し金利が低く期間が長い、借りる側にお得な条件になっているだけだ。
制度の趣旨として資金は成長しそうな事業に向けることになっているが、日銀も民間金融機関もどこが成長するかはよく分からない。チェックなどしようもない。