日銀は6月14、15日に開催した金融政策決定会合で、「成長基盤強化を支援するための資金供給」の詳細を決定した。すでに報道されていた内容に概ね沿ったものであり、意外感は乏しい。また、4月30日の金融政策決定会合で共有された3つの留意点――(1)通常の金融政策運営の遂行上制約にならないこと、(2)個別企業へのミクロ的な資源配分に過度に介入することを回避すること、(3)日本銀行の資産の健全性を確保すること――を踏まえた内容にもなった。公表文には、「本資金供給の枠組みを決めるにあたっては、日本銀行自身が個別の企業や業種への資金配分に直接関与しないこと、ならびに資金供給の規模や期間の点で、金利政策や金融調節の円滑な遂行に支障を来さないことに留意した」というくだりがある。後段部分は要するに、通常の金融政策運営とは切り離す、という含意であろう。

(1)資金供給の狙い

「金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを進めるうえでの『呼び水』となること」および「金融機関が自らの判断で行う多種多様な取り組みをできるだけ幅広く後押しすること」

(2)対象金融機関および要件

 共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち希望する先。各対象金融機関は、成長基盤強化に向けた「取り組み方針」を策定し、要件を満たすことにつき日銀の確認を受ける。

 対象となる融資・投資の資金使途として示されたのは、18分野(研究開発、起業、事業再編、アジア諸国等における投資・事業展開、大学・研究機関における科学・技術研究、社会インフラ整備・高度化、環境・エネルギー事業、資源確保・開発事業、医療・介護・健康関連事業、高齢者向け事業、コンテンツ・クリエイティブ事業、観光事業、地域再生・都市再生事業、農林水産業・農商工連携事業、住宅ストック化支援事業、防災対策事業、雇用支援・人材育成事業、保育・育児事業)。ただし、上記はあくまでも例示であり、「上記以外の資金使途であっても成長基盤強化に資するものは対象とすることができる」

(3)資金供給の方式

 共通担保を担保とする貸し付け(共通担保オペと同じ電子貸付方式)

(4)貸付期間、借り換え可能回数

 原則1年とし、3回まで借り換え(ロールオーバー)を可能とする(最長4年)。新規貸付は四半期に1回のペースで実施する予定。

(5)貸付利率

 貸付時の無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準

(6)貸付限度額

 貸付総額の残高上限は3兆円(1回当たりの貸付総額は1兆円が限度)。対象金融機関ごとの貸付残高の上限は1500億円。各対象金融機関は、「取り組み方針」の下で行った各四半期の融資・投資の実績額の範囲内で、借り入れを行うことができる。

(7)貸付受付期限

 2012年3月末(新規貸付の最終実行期限は同年6月末)