日本は天然資源が乏しいため、加工貿易で発展を遂げてきた。これは日本の産業モデルの定説である。しかし、一概に資源がない国だとは言い切れない。「海洋生物に関しては、日本は世界有数の資源大国です」。そう語るのはオーピーバイオファクトリー(沖縄県那覇市)の金本昭彦社長だ。

オーピーバイオファクトリーうるま研究所が入居する沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター(沖縄県うるま市)。この他、石垣島にも研究所がある。

 オーピーバイオファクトリーは、海中から様々な生物資源を採集し、製薬会社や化粧品会社、食品会社、エネルギー会社などに提供する会社である。創業は2006年。2010年度には5000万円に満たなかった売り上げが、2012年度には約2億円と急速な成長を遂げている。

 成長の牽引力となっているのが「スクリーニングサービス」という事業だ。ダイバーが海に潜って海中の泥や海水、海洋生物などから微生物や微細藻類を採集する。同社ではそれらを生物資源ライブラリーとして保有している。その数は約一万数千種に及ぶ。化粧品会社や製薬会社から「美白成分のある化粧品原料を探したい」「抗生物質をつくりたい」などといった要望を受けると、ライブラリーの中から目的に合致する生物資源を探し出し、提供する。

 同社の成長の背景には、顧客企業の間で海洋生物資源に注目が集まっているという大きな流れがある。なぜ今、海洋生物資源に注目が集まっているのか。また、その中で日本の海はどれほどの可能性を秘めているのか。金本社長に話を聞いた。

シーズ探索のフィールドは陸から海へ

──なぜ、海洋生物資源に注目が集まっているのですか。

金本昭彦社長(以下、敬称略) 創薬を例にとって説明しましょう。創薬の主要な方法の1つに天然物創薬があります。抗生物質などは大体そうなんですが、微生物や細菌、カビなどの天然物を利用して医薬品を開発するやり方です。

 その際、今まではもっぱら陸上にある天然物が使われてきました。日本で開発された薬の例を挙げると、「プログラフ」という免疫抑制剤があります。筑波山の土から取れた微生物から開発された薬で、現在、アステラス製薬(開発当時は藤沢薬品)の売り上げの4分の1ぐらいの売り上げを上げています。また、三共(現在の第一三共)が開発した高脂血症用剤「メバロチン」は、京都の漬物屋さんで採れたカビがもとになっています。