マット安川 ゲストに政治評論家・浅川博忠さんを迎えて、100日のいわゆる“ハネムーン期間”が過ぎた安倍政権の現状や選挙制度改革、参院選後に予想される改憲をめぐる政界再編について伺いました。

1票の格差へのこだわりが地域格差をさらに広げる

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:浅川博忠/前田せいめい撮影浅川 博忠(あさかわ・ひろただ)氏
政治評論家としてテレビ・ラジオ、週刊誌などで政治解説、コメンテーターを務める。『小沢一郎 独走す』(東洋経済新報社)、『政権交代狂騒曲』(講談社文庫)など、著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

浅川 私が最近、ちょっと腹を立てているのは、1票の格差をめぐる司法の判断に対してです。違憲だって言うだけならともかく、選挙を無効とする判決も一部出ている。それに迎合したマスコミの報道も気になります。

 人口だけを基準としたら過疎地の議員はどんどん減らさざるをえません。今の0増5減にしても、1票の格差を2倍以下にするには42の選挙区をいじる必要がある。結果、高知県や福井県など5つの県は今まで3人出ていたのが2人に減ることになります。

 こういう地域は今までですらハンデを背負ってきたのに、ますます取り残されてしまうでしょう。1票の格差にこだわりすぎると、都市と地方の格差はさらに広がり、そうなれば少子高齢化も加速します。

 人口だけでなく選挙区の面積や過去数年の投票率といった要素を加味することで、地方選出の国会議員を減らさないようにすべきです。

「政策は二の次」の自公連立は現行選挙制度の産物

 今の国会は選挙制度も含めて抜本改革を迫られていると思います。

 まず問題なのは、二院制を守るべきかということ。今の参議院には独自性というものがありません。衆議院のカーボンコピーと言われても仕方がないでしょう。

 この7月の選挙では、昨年の衆議院選挙で落選した議員がかなりカムバックするようですしね。まるで落第生を救済するための受け皿みたいじゃないですか。

 小選挙区比例代表並立制も見直すべきです。例えば自民党と公明党の連立政権というものも、この制度のせいでできるべくしてできた形です。

 自民党は小選挙区で公明党の票をもらい、その分比例区では公明党を支援する。一方の公明党は支持勢力の性質上、候補者を立てられる選挙区が限られますから、比例区で半分以上当選させないといけません。

 両党はそんな具合に選挙協力をしやすい関係だから、政策では必ずしも一致しないのに手を組んでいるわけです。