スウェーデンの学校が崩壊の危機に立っている。国の教育制度が前例のない批判の嵐を受けている。国際的な比較においても、スウェーデン生徒の学力の低下は著しい。
3月の終わりに、「学校の運営と管理責任を地方自治体から国家管理へ戻すことを要求する請願書」が提出され、それに続いて全国紙ダーゲンス・ニーへテルが「教員の月給を1万クローナ(約15万円)引き上げよ」と題する記事を掲載した。この記事は4月21日現在、9000人近くがフェイスブックの「いいね!」で共有している*1。
これらをきっかけに、4月以降、学校制度に対する疑問と批判が噴出している。
と言っても、学校の問題は今急に始まったわけではない。以前にも書いたが、まず教師の離職率が高い。筆者が勤めるヨーテボリの高校でも、校長をはじめ頻繁に先生が代わるので、私自身、半数かそれ以上の先生はもう名前すら分からない。というより、覚える気力を失った。
校長ですらしょっちゅう交代している。筆者が教えている高校では、この2年間で3人目の校長だ。スウェーデンテレビの報道によると、南部スコーネのヘッセルホルム・コミューンにある、6年生から9年生が通うティリンゲ校では、3年間で4人の校長が代わったとされている。同じ記事によると、同コミューンでは2010年の秋学期以降、校長が2人以上代わった学校が13校ある*2。
なので、これは局所的・地域的な問題ではなく、全国に蔓延している現象なのだ。
これについて新しく来た校長に、なぜ今までの校長が辞めたのかと理由を尋ねてみたことがある。彼は「それについて意見を言うことはできない。自分も知らない」という返事だった。が、彼は、校長が長期的にとどまることは非常に重要であるし、校長が代わることが学校の問題を悪化させていると思うと言う。
「とにかく我々は今、前任が辞めたギャップを埋めるために働いているのだ」という返事だった。
同僚である保健の先生は、最近は胃の痛みや体調の不調を訴える学生が増えていると言う。特に2011年秋から成績の評価方法が変わったことが生徒にストレスをもたらす大きな要因だと考えている。この新評価システムも、学生間に不公平と不平等をもたらすと批判されている*3。
学校システムの崩壊
定期的に行われる「学校査察」によると、教育現場の現状は惨憺たる結果だ。
2012年に査察を受けた小中学校のうち、「問題なし」とされた学校はわずか4%。残りの96%、全国745校のうち715校が何らかの点において「不十分である」とされている。
特に多かった批判点は、「生徒に必要なサポートが届いていない」ことだ。多くの学生が勉学で遅れており、支援を必要としているが、65%の学校で必要なサポートが実行されていない*4。
*2=http://www.svt.se/nyheter/sverige/elev-man-har-inte-kant-sig-sa-trygg
*3=http://www.dn.se/nyheter/betygen-fortfarande-orattvisa
*4=http://www.dn.se/nyheter/sverige/betyget-de-klarar-inte-kraven