経営力がまぶしい日本の市町村50選(11)
私は20年ほど全国で市民による財政白書作りをお手伝いし、これまでに約50地域で発刊されるのを見届けてきたが、議員が主導して作成するケースは非常に稀である。
そんな稀有な地域の1つに岩手県の紫波町(しわちょう)がある(他は岩手県西和賀町と石川県加賀市)。
議員主導の財政白書作りに取り組んだ自然豊かな町
2009年に「しわの財政白書をつくる会」が発足され、2010年12月にめでたく財政白書が発刊された。
ことの発端は、2008年に市民参加条例が制定されたこと。町民参加が一層求められる中で財政の深い理解が必要になったことに加え、紫波中央駅前開発という大規模開発が着工され、財政運営に対する強い懸念があったからである。
当初は水面下で活動していたが、白書が発刊されると、大規模開発が進行する中で「しわの財政白書をつくる会」は議会公認の組織として住民への財政情報の提供など重要な役割を担うに至っている。
このように議員が財政に対して意識が高い地域は珍しいのだが、紫波町は環境的に不利な土地柄というわけでもなく、むしろ恵まれている方である。
盛岡市と花巻市の間に位置する人口3万4000人の小さな町ではあるが、町の中央を北上川が南流し豊かな水に恵まれ、また北上川河岸には肥沃な農地が広がる。
その一方で町の東部は北上高地に抱かれた丘陵であり、西部は奥羽山脈に続く丘陵地となっており、南北に開けた自然環境豊かな地勢を形成している。
平野部では米はもちろん、麦や蕎麦も栽培され、西部では洋なし、ブルーベリー、東部ではりんごやぶどうが栽培されている。特に100%町内産のぶどうでつくる自醸ワインは専門家からも高い評価を受けている。
紫波町は南部杜氏発祥の地でもあるため、かつては一般の農家でも酒をつくるぐらい酒造りが盛んで、一時は1000人以上が全国の酒屋で杜氏として働いていたほどである。