メキシコ湾海底油田爆発による掘削パイプからの原油流出が、深刻な環境被害をもたらしている。即効性のある対策が見つからず、ハリケーンシーズンを間近に控えさらなる悪化も懸念されている。米国ではバラク・オバマ大統領の責任を追及する声さえ高まってきた。
メキシコ湾で原油を垂れ流すBP社の原点はイランにある
その石油掘削施設はBP社のもの。数年前まで正式には British Petroleum(英国石油)と名乗っていた世界第3位の国際石油資本である。
その名が示す通り英国資本であるBP社の歴史は、20世紀初頭、アングロ・ペルシャン・オイル・カンパニーによるペルシャ、つまりイランでの石油採掘に始まる。
長年続いていた「グレートゲーム」と呼ばれるせめぎ合いは、英露協商という歴史的転回で一気に解消されることになった。
第2次世界大戦が勃発してからも連合国サイドで手を組んだ英ソ両国は早々にイランへと共同進駐、協商で決めた通りに南北で権益を分け合うことになる。
当時のイランは中立を掲げていたものの、英ソの影響からの脱却を図りドイツに接近中。英国が利権を持つイランの石油がドイツの手に渡ってしまえば戦局に大幅な悪化をもたらしかねないとの懸念があっての、素早い占領行為だった。
クルド人が手にした初めての国だったが・・・
終戦を迎え英国軍はすみやかにその地を去ったが、北方のソ連軍は居座り続け、マハバート共和国という傀儡国を建国してしまう。
別名クルド人民共和国と呼ばれたその国はクルド人が持った初めての国家だったが、1年ほどでソ連がその地を去るとともにあえなく消滅してしまう。
推定2000万人と言われる彼らの居住地はイラク、イラン、シリア、トルコという4カ国にまたがることになり、民族自決が是の現代社会では、どの国でも邪魔者扱いされるようになっていく。
中でも1000万人以上と世界で最も多くのクルド人が住んでいるのがトルコだ。しかし、現代トルコの政策にはクルド人というものは存在しない、という完全にアイデンティティーを否定された存在であった。