1つの政治判断がすべての国民を納得させることは無理――。それを改めて思い知らされる事例が米国で起きている。

 今年2月初旬、米環境保護団体3グループが内務省を提訴した。もちろん決着は当分先だが、3グループは連邦政府が所有する西部6州にまたがる広大な土地に、大規模な太陽光発電所ができることに異議を申し立てた。

砂漠にも希少動植物が生息しているからダメ

再生可能エネルギーに取り組む小さな町、エネルギー自給を目指して 米国(上)

コロラド州デンバーのビル屋上に設置された太陽光パネルの間を歩くオバマ大統領〔AFPBB News

 一見すると不毛の土地と思われる砂漠である。だが希少動物や植物が生息しており、ソーラーパネルが設置されることは好ましくないとの立場だ。先住民族が先祖から受け継いだ土地も含まれており、反対派は環境破壊につながると主張する。

 3グループは「西部土壌プロジェクト」「砂漠保護評議会」「西部水域プロジェクト」という団体で、砂漠を産業用地に変えることは国家環境政策法(NEPA)に抵触すると訴える。

 ただ、この地で太陽光発電の事業を行うのは連邦政府ではない。内務省が民間企業に土地をリースし、エネルギー関連企業がソーラーパネルを設置する。環境保護団体は、土地使用を許可した連邦政府に判断ミスがあったとの論理を使う。

 「西部土壌プロジェクト」の創設者、ジェニーヌ・ブルーロック理事は文書で、こう述べる。

 「バラク・オバマ政権は自然豊かな広大な土地を、不必要な産業用地に変えようとしています。その土地は国民のものです。太陽光発電は本来、民家の屋根や駐車場、ビルの屋上、廃棄された土地などで行うべきです」

 その主張には一理あるが、連邦政府が太陽光や風力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーに力を入れている背景がある。実は今、反対派に回っている環境保護団体こそが、オバマ政権の誕生を契機に再生可能エネルギーを後押した急進派そのものなのだ。

 彼らはジョージ・W・ブッシュ前政権が推し進めた石油や石炭等の化石燃料に反対した。