EU市民は、ドイツで事業を申請すれば滞在が許可され、子どもを連れていれば、すぐに児童手当がもらえる。事業申請には26ユーロと住所があればよく、ベルリンの外国人集中地域のノイケルンでは、去年の夏の段階で、1377のブルガリアの事業者、1034のルーマニアの事業者が登録されていたという。今はさらに増えているだろう。

 児童手当は2人目までが185ユーロ、3人目からはもっと額が上がる。児童手当は18歳までで、場合によっては25歳まで延長が可能。なお、登録した事業がうまくいかないと、今度は最低の生活を保障するための臨時の生活保護費が出る。

 アルバニアでは、ユーロに換算して月に200ユーロあれば普通に生活できると聞いたので、彼らにとってドイツの児童手当と生活保護費は、垂涎の的。どんどん流入者が増えるのは当然のことだ。

仏伊首脳、シェンゲン協定の修正求める 難民大量流入で

2011年4月、仏・伊首脳は、難民大量流入の問題でシェンゲン協定を修正すべしとの認識で一致し、欧州連合(EU)首脳部あてに書簡を送った〔AFPBB News

 EUにはシェンゲン協定というのがある。EU内での国境でのパスポート検査は廃止し、人間の自由な往来を保証するというものだ。イギリスだけはシェンゲン協定の加盟を拒否しているので、EU国の中で唯一入国検査があるが、他の国は出入り自由だ。

 ただし、ルーマニアとブルガリアは、2007年にEUに加盟したが、シェンゲン協定への参加は、7年間据え置きということになっていた。

 つまり、来年、その据え置きの7年が終わり、ブルガリアとルーマニアの人々が、何の検査もなくEUに入れるようになるはずなのだが、3週間前、EUの内務大臣の会議で、ドイツの内相が拒否権を発動して、待ったをかけた。

 ドイツとしては、すでに社会保障システムに無視できないほどの損害が出始めており、これ以上の社会保障濫用ツアーは看過できないのである。

EU内の自由な往来は、ドイツのお金を狙うためにある?

 ドイツ内相は、ブルガリアやルーマニア政府をサポートして、ロマが祖国で生活できるようにすべきだと提案し、私もそれがベストだと思うのだが、EUにはヨーロッパ単一を願う原理主義者のような政治家も多く、ドイツ内相はあたかもEU分離派のようにひどく批判されてしまった。

 ただ、ドイツ国民は内相を支持している。「貧しい人はどんどんドイツへやって来て、私たちの税金を使ってください」などとは決して思っていない。

 現在、シュトゥットガルトでも、ロマの物乞いが急激に増えている。聞くところによると、物乞い集団はマフィアなど犯罪組織によって組織化されており、夜になると、元締めが上がりを集めるのだそうだ。