そういえば、物乞いをしている人たちに、目にはっきり見える身体障害者が多い。足がなかったり、手がなかったり。去年の夏からは、突然、車いすに乗って物乞いをしている若いロマが増えた。車椅子で走り回っていた人たちは、その後、半年ほどで、忽然と消えた。
驚いたのは、先々週、ノルウェーに行ったとき、そこにもロマの物乞いがたくさんいたことだ。現地の人に聞いてみたら、つい最近からの新しい現象だという。
ノルウェーはEUには加盟していないが、シェンゲン協定に加盟している。だから、デンマークやスウェーデンなどから検閲なく人が入ってくるので、ロマも混じって入ってくるのだろう。とはいえ、こんな寒いところで物乞いとは、何と頑丈な人々かと思う。
正確に言うなら、クロアチアのEU加盟と、EUの貧しい国々からの不法労働者の問題と、さらに、ロマの社会保障制度の濫用は、3つの異なった問題で、それぞれ別途に対処しなければいけないのかもしれない。しかし、実際には、根っこのところは繋がっているようにも思えてならない。
ドイツの内相が、「EU内での自由な往来というのは、ドイツの生活保護を受ける方が自国で暮らすよりもよい生活ができると思った人々が、いつの日か、ヨーロッパのあらゆるところから、自由にドイツへ来られる自由を意味するのか?」とブリュッセルで言ったのは、ドイツ人の持つ疑問を的確に表している。
クロアチアの加盟が発表された翌日27日、今度は、スロベニアの財政が破産の危機に陥っているというニュースが流れた。
スロベニアは、2004年に旧ユーゴスラビアから初めてEUに加盟した国だ(クロアチアは旧ユーゴで2番目となる)。ユーロ導入は2007年。破産を回避するため、EUの援助を申請するらしい。
これらの国を審査して加盟を認めたのはEU自身なのだから、自業自得とはいえ、いったいどんな審査だったのかと思う。ユーロ圏内の経済格差はとにかく半端ではない。
ちなみに、アルバニアも2009年にEU加盟を申請した。その翌年、加盟の条件と国情があまりにもかけ離れているということで、申請は却下されたものの、まだ諦めずに一路邁進中だそうだ。
EUの前途は多難である。