私の知っているクロアチア人は女性が多く、家政婦や掃除婦、あるいは介護婦として働いている。ドイツでは、お掃除は自分でしない人が多く、かといって、正式に掃除婦を雇うと、週1回でも高額な出費となる。もちろん、社会保障費を支払わなければいけないし、法定の休暇日数も保証しなければいけない。

 そこで一般に行われているのが、ヤミ労働である。家庭での掃除で動く金額は微小なので、ほぼ正式に黙認されていると言ってよい。

 最近は、寝たきり老人の世話を住み込みで頼む人も多い。家が広くて、介護婦に1室を与えることができれば、住み込んでもらってお給料を払っても、老人ホームより安く済む。

 そういう情報は口コミでどんどん広がり、「うちもそういう人が欲しい」となると、当の介護婦が親戚やら友人を紹介してくれる。ドイツで稼ぎたい人はたくさんいるのだ。

 中には、姉妹2人で1組になり、3カ月ごとに交代して、法の目を潜り抜けている人もいる。雇っている方にしても、穴が開かないので都合がよい。3カ月で出国していれば、内部告発や、お金を貰っている現場を現行犯で捕まらない限り、何の問題もない。

社会保障費が目的でブルガリアやルーマニアからやって来るロマが急増

 こういうヤミ労働に多く従事しているのが、旧ユーゴスラビア諸国、そして、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなど東欧の人々だ。東欧の方はすでにEUの加盟国なので、ドイツのどこに住もうが勝手だ。

 ところが最近、違う問題が持ち上がっている。ルーマニアとブルガリアから、おびただしい数のロマが入り込んでいるのだ。ルーマニアもブルガリアも2007年からEUの加盟国なので、ドイツへ入るのは問題がない。もちろん住む権利もある。

 ロマがドイツで何をしているかというと、ヤミ労働ではなく、ずばり正攻法でドイツの社会保障費を狙う。ロマというのは東欧に多くいるが、特に多いのがブルガリアとルーマニア。私は昨年12月にアルバニアに行ったが、ここにも多かった。

 ロマの共通点は、彼らが自国でまったくサポートされていないどころか、その存在さえ認められていないほど激しく差別されていることである。私事ながら、うちの三女は現在、アルバニアでそのロマの子供たちを救済するNGOのプロジェクトに参加して同地にいるので、その状況は少しは知っているつもりだ。

 ロマの子供は出生届さえ出されていないこともあり、そうなると、教育も受けられない。自分の国で不法滞在しているようなものだ。

 たとえ学校は出ても、そのあと誰も雇ってくれないので、多くは生きていくために、先祖代々の稼業である物乞いやゴミあさりをするしか方法がない。絶望的な状況だ。その彼らが、現在、長距離バスに乗って続々とドイツへやって来る。