北米報知 2013年2月21日9号
ワシントン州中南部リッチランドのハンフォード核施設で15日、放射性廃棄物貯蔵タンクから年間で最大300ガロンの放射性廃棄物が土中に漏出していることが判明した。
ジェイ・インズリー州知事は問題に強い危機感を示し、連邦政府に老朽化した貯蔵タンクの早急な除染を求めている。
16日付のトライシティー・ヘラルド紙電子版によると、1940年代に原子爆弾のプルトニウム精製が行われたハンフォードでは、43年から44年にかけて64基の廃棄物貯蔵タンクが建設された。
エネルギー省の定期検査によって、そのうちの1基のT-111から漏出が発覚した。
同省の調べによると、流出量は年間150~300ガロンで、降水や雪解け水がタンク内に浸入したことによって水位が上昇し、汚染物質がタンク外に漏れ出したとみられている。
これまでに検査された3基でも汚染物質の流出が確認されており、未検査のタンクでも老朽化による同様の漏出があると懸念されている。
エネルギー省は、汚染物質の一部がハンフォード中心部の地下水に及んでいるが、コロンビア川や周辺地域で人体に被害を及ぼす量の放射能は検出されていないとしている。
同省は全部で149基ある一枚鋼版の貯槽タンクのうち、すでに10基の除染を完了、来年9月までにさらに6基を除染する予定だ。
ハンフォード核施設の除染作業は2047年の完了と長期にわたり、課題も多い。今月に入り民主党の下院予算委員会が連邦予算の削減を表明したため、来月以降の貯蔵タンクの除染作業は鈍化する可能性がある。作業員数も削減される予定だ。
インズリー州知事は「逼迫(ひっぱく)した財政はこの事態を放置する理由にはならない」と予算委員会の判断を批判。「ハンフォード核施設の除染はエネルギー省の義務」として、連邦政府に早急な除染作業と問題解決の優先を訴えた。
(山田 優紀)
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