米グーグルがまもなく市場投入する、めがね型のインターネット端末「グーグル・グラス」が発売前から物議を醸している。
この端末は、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する拡張現実(AR)の機能を備えている。右目部分に小型の透過ディスプレイを搭載しており、視界を妨げることなく情報が目の前に表示される。
スケジュールや気象情報、地図などが閲覧できるほか、様々なアプリも利用でき、内蔵のマイクを使って音声で操作するというものだ。
例えば、「よし、グラス」と呼びかけた後に、「ビデオチャットにしてくれ」などと命令すれば、目の前に相手の顔が現れ、そのまま顔を見ながら会話ができる。「道順を案内してくれ」と頼めば、徒歩ルートを地図検索し、ナビゲーションの指示どおりに道を進むことができる。
と、ここまではよいのだが、問題は「動画を撮影してくれ」「写真を撮ってくれ」といった命令だ。グーグル・グラスにはカメラも内蔵しており、スマートフォンでできることは一通りできる。ただ、スマートフォンと違うのは、それと気づかれることなく撮影できてしまうこと。これがプライバシー上非常に問題があると指摘されているのだ。
「当店ではグーグル・グラスお断り」
今、米メディアを賑わしている騒動の発端は米ワシントン州シアトルのとある飲食店の店主がフェイスブックに投稿したメッセージ。この中で店主は、「当店は、グーグル・グラスを禁止するシアトルで最初の店になる。違反者には店を出ていってもらうつもりだ」と書き込んだ。
ここには詳細について述べられていなかったが、後に米マイノースウエスト・ドットコムというメディアが店主にインタビューしたところ、その店は隠れ家的に利用されているバーで、怪しげな雰囲気が売りなのだという。人に知られたくないと思う客が多く来るプライベートな空間で、そんな場所でグーグル・グラスを使用されては顧客が迷惑するというのだ。
特にこの店は、米アマゾン・ドットコムの本社が近くにあり、テクノロジー好きの人も店に来る。そういう人たちがグーグル・グラスを利用するのはよいが店内では困ると店主は言っているという。
グーグルの説明によると、グーグル・グラスは撮影した写真をその場でネットにアップロードし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で共有できる。また撮影した動画はリアルタイムでビデオチャットの相手に見せることもできる。
つまり、グーグル・グラスをかけた人があちらこちらにいる近い将来は、監視カメラが今以上に増えることになり、その映像が許可なくネットに公開される恐れがあるというわけだ。