先日、とある大手部品製造会社の工場を訪問した。創業から100年を超える老舗の製造会社だ。

 工場は国内外にあり、たくさんのスタッフを抱える技術者集団だが、いまここで大きな革新が進んでいる。それは、業務のデジタル化による共有の革新だ。

 まず、これまで各工程での品質チェックには大量の紙のマニュアルを作成し利用していたが、工場にiPadを導入しこのマニュアルをデジタル化した。

老舗企業の製造現場を劇的に変えたiPad

 老舗企業ゆえに、その長い歴史で培ってきたやり方を変えることやデジタル化の作業には随分と骨が折れたようだ。

 工場のスタッフは、この手のデジタルデバイスやインターネットサービスへの関心や利用は概ねアクティブではなく、当初はむしろ拒絶反応が強かったらしい。しかしいまは、工場のスタッフがそれぞれiPadを携帯し、その利便性を享受している。

 大量の紙のマニュアルは小さなタブレット端末に集約、そこで最新情報がタイムリーに更新され、必要な情報は速やかに検索で抽出できる。

スマホとタブレットが一体化、「ファブレット」続々登場

小型化が進むタブレット端末(写真は「モバイル・ワールド・コングレス 2013」で、サムスン電子の「ギャラクシーノート8」を試す来場者たち〔AFPBB News

 長期にわたって紙のマニュアルを使ってきた時代はいったい何だったのかという衝撃を受けているようだ。

 これはひとまず、小さくても大きな一歩目の革新だ。

 この工場のもう一歩の革新は、iPadを用いた共有の革新だ。タブレット端末やスマートフォンで動作する独自のアプリケーションを開発し、各作業工程でこれを活用するようになった。

 このアプリケーションを基点に、現場の作業進捗、クレームが発生した時はその事実や内容と、実に様々な業務プロセスがリアルタイムに共有されていく。