北米報知 2013年1月31日
ロハス(Life-style Of Health And Sustainability)という言葉が使われ始めて久しくなるが、その理想型を体験、もしくは実践するビジネスがある。それは都市内型ファーミング(農園)と呼ばれていて、世界の各大都市内で始まっている。もちろんここシアトルでも。温暖化と環境汚染、そして人口急増による世界規模での食糧危機が叫ばれる中、未来の人類社会を支えるのはこれ以外にないかもしれない。
環境配慮型の農業、そして食の安全を突き詰めると、地産地消の有機農業という考え方に辿り着く。産地から消費者までの距離を極力短縮することで、作物の運搬に掛かる負荷を下げることができ、同時に極めて新鮮な野菜や果物を食べることができるという訳だ。
このコンセプトの中にはもう二つの大事な要素が含まれている。普段見落とされがちなそれらの一つは、水資源の移動ということ。実は野菜や果物の成分中で大半を占めているのは水分であり、作物が移動するということは相当量の水が移動しているという意味でもある訳だ。
以前にも書いたが、水というものは元来自然の循環体系の中にあるのが最も健全な形である。ならば、砂漠で地下水を汲み上げて育てた農作物を、雨の多い地域に運搬して消費するのは、それ自体非常に矛盾したシステムだといわざるを得ないし、特定の地域の干ばつや砂漠化を更に推進してしまう結果となってしまう。
もう一つの要素は、すでに人体や自然環境に対して危険である事が証明されている遺伝子組み換え作物。それらから自身や家族の健康を守るという意味合いである。地産地消は最後の砦なのだ。
さて、都市内ファーミングといってもその形式は色々とある。昔から存在する小規模だがれっきとした露地栽培の従来型農業から、更に小型のスペースを利用したどちらかといえば「ゲリラ的農業」まで、規模においても様々だが、農業形態そのものも多様化してきている。
比較的小型の農業に多く見られる水耕栽培やアクアポニックス等が、最近では特に各方面から注目されているようだ。水耕栽培とは、その字のごとく土を使わずに、水に栄養素を含ませて野菜を育てる方法のこと。
アクアポニックスとはそれの進化版の事で、水耕栽培(ハイドロポニックス)と魚の養殖(アクアカルチャー)の両方をドッキングさせた形式をいう。いわゆる造語なのだが、これは現在ますます研究が進む中、未来の人類社会を支える究極の農水産業として捉えられている。
簡単に解説しておくと、魚の養殖では食べ残しや糞尿が水に蓄積していくが、それらはろ過されなければいけない。だが反面そのろ過水は窒素やリン酸等の有機物を多く含み、農作物への有力な栄養分でもある。
ならばその水を水耕栽培に利用して、内在する栄養分で野菜を育てれば、水産と農産の滋養と排泄の両方を補い合うことができて、有効かつ効率の良い生産体系となるという考え方である。