米国を代表する新聞シカゴ・トリビューン(CT)やロサンゼルス・タイムズ(LAT)などを発行するトリビューン社(本社イリノイ州シカゴ)が経営破綻に陥った。米国の多数の読者と広告主を失意のどん底に突き落とし、新聞業界の患う「病」が顕在化した形だ。
1847年6月10日、トリビューン社は「CT」を発刊。その後、業態の垣根を越え、新聞社やテレビ局など関連企業を傘下に多数収め、米国を代表するメディアグループに成長を遂げた。従業員は2万人、年間総収入は55億ドルに達する。
新聞事業では「CT」「LAT」のほか、ハートフォード・クーラント(コネチカット州)やオーランド・センティネル(フロリダ州)など全米に8紙を所有する。合計発行部数は日刊紙で800万部、日曜版は1100万部に達している。
それに加え、全米各地に23のテレビ局、そしてケーブルテレビ局を持ち、運営してきた。テレビ局の中で最も有名なのがシカゴのWGNであり、7000万世帯が視聴可能だ。
リストラで血を流したが・・・広告収入激減
今回、トリビューン社(総資産額76億ドル)は日本の民事再生法に相当する破産法11条に基づき、会社更生手続きの適用を連邦破産裁判所に申請した。負債総額は130臆ドルと報じられている。
一昨年、「シカゴの不動産王」サム・ゼル氏が同社を買収。株式の非公開化や、大規模な人員削減を断行し、経営再建を進めてきた。ところが、景気後退に伴う広告収入減少に加え、インターネット上のニュース検索普及で新聞購読部数の落ち込みに拍車が掛かった。
負債削減のため、トリビューン社は2007年にニュースデイ(ニューヨーク州ロングアイランド)をケーブルビジョン・システム社(本ニューヨーク州ベスペイジ)に6億5000万ドルで売却。社内では支出の徹底的な刈り込みを行い、1500人の雇用削減も断行した。
リストラで血を流しても、経営環境は改善しなかった。とりわけ、広告収入が不振を極め、2008年第3四半期の落ち込みはマイナス19%を記録。破産管財人のジェローム・ライスマン弁護士は「トリビューン社が直面した経営困難は、新聞業界全体を苦しめてきた病気が顕在化したものだ」とメディア界全体に警告を発している。