写真1 白浜海岸の全景

 東日本大震災から2年目を迎える2013年2月、宮城県石巻市にある白浜海岸を訪ねた。

 北上川が太平洋に注ぐ追波湾に面した海岸で、海水浴場があり、夏場の海水浴客だけでなく、観光用の地引き網が楽しめるところとしても人気があった。きれいな砂浜の向こうに湾を囲む山や島が浮かぶ景色は絶景で、私も震災前は何度も行ったところだ(写真1)。

 2010年の夏には、千葉県から遊びに来た孫たちを連れて地引き網に参加し、獲れた魚は海岸でのバーベキューで味わった(写真2)。

写真2 白浜海岸で行われた地引き網

 東日本大震災では、大津波が押し寄せ、海岸線に沿って建てられていた白浜・長塩谷地区の44戸の集落は全滅、多くの犠牲者が出た。震災後2カ月経って訪ねたときには、ほとんどの民家が流されたため集落がなくなっていて、わずかに残った家も激しく壊れ、津波のすさまじさを物語っていた(写真3、写真4)。

 石巻市は、2012年7月に公表した「復興整備計画」で、この地域を災害危険区域に指定して住宅の建築を制限、高台移転の計画を進めている。

防波堤工事の計画に憤る熊谷さん

 久しぶりに白浜に出かけたのは、ここの住民で、自宅を完全に流された熊谷秋雄さん(48)から、「大きな堤防ができて、白浜の景観が台無しになりそうだ」との電話を受けたからだ。

写真3 白浜海岸の被害

 早速、海岸に行ってみると、高さ2メートルほどの防潮堤の後ろに走っている道路に沿って、赤白に塗られた山型の棒があちこちに建っていた(写真5)。何だろうとしばらく考えていたら、堤防の高さを示す指標だと思い当たった。

 海岸を見たあとで、北上川の河口から5キロほど遡ったところに仮事務所を置く熊谷さんに会いに行った。