安倍晋三首相の演出した円安・株高の勢いが止まらない。日経平均株価は12週連続で上昇し、1959年以来の大相場になった。株価はここ3カ月で30%近く上昇し、これはバブルのピークだった1988年の年間上昇率とほぼ同じだ。

 しかしバブルといっても25年前のことで、記憶しているのは今の40代以上だけだから、痛い目に遭ったことを忘れて「安倍バブル」をあおる人々が出てくる。私も、かつてバブルをあおったメディアの一員として、同じ愚を繰り返さないように当時の教訓を語り継いでおこう。

【教訓1】 過剰な「景気対策」がバブルを生む

 バブルが起こった直接のきっかけは日銀の過剰な金融緩和だが、その背景には実体経済のゆがみを金融政策でカバーしようとする無理な「景気対策」があった。

 1985年のプラザ合意で円高誘導が行われ、為替レートが1ドル=250円から1年で150円まで暴騰し、深刻な「円高不況」が起こった。これに対して不況で歳入の減った大蔵省が財政支出をきらったため、景気対策はすべて金融政策で行われた。

 80年には9%だった公定歩合が1987年には2.5%まで下がり、これが2年間続いた。1989年からは日銀が遅まきながら公定歩合を引き上げたが、政治家は強く抵抗し、橋本龍太郎蔵相は「日銀総裁を解任する」と脅した。

 この背景には金融自由化もあった。85年の日米円ドル委員会で預金金利などの自由化が決まり、大口定期預金の金利が上がった。他方、大企業はユーロ円債などで起債できるようになり、優良な融資先が減った銀行は、建設・不動産・ノンバンクの「バブル3業種」に融資を集中し、空前の地価・株価の上昇が起こったのだ。

【教訓2】 バブルで物価は上がらない

 安倍首相は日銀が「輪転機をぐるぐる回すとインフレが起こる」と思っているようだが、消費者物価指数は80年代後半にも年平均1.3%しか上がらなかった。ドル安で輸入物価が下がり、不況で賃金が抑制されたからだ。