「会社自体が全く協力的じゃないんです。去年からずっと、会社登記を Private Limited Company(私的有限責任会社)から Public Limited Company(公開有限責任会社)に変更しておいてくださいとずっと言っているのに、まだやってなかったなんて。簡単な手続きで済むのに・・・本当に上場する気はあるのかしら。せっかく面談時間をいただいたのに、こんな話で申し訳ありませんが・・・」
2013年1月31日、筆者と面談したカンボジア現地証券会社スタッフ(台湾系女性)は、会うなり流暢な英語で、愚痴とも言い訳ともつかぬセリフで切り出した。
カンボジア証券市場・上場第1号への投資は、その後どうなった?
カンボジアの首都プノンペンを南北に貫く目抜き通りの1つモニボン通り。豪華な内外装を施し、鳴り物入りで店舗オープンした韓国系大手ベーカリーチェーン・トレジュールや、韓国現代グループが手がける高層オフィスビル、プノンペン・タワーなどが、通り沿いの市内中心部に立ち並び、韓国系進出の勢い再燃を感じさせる大通りである。
市内中心部からモニボン通りを北上すると、大型上場案件候補と言われ続けている国営通信会社テレコム・カンボジア、現地最大手商業銀行アシリダ銀行本店、老舗ホテルのプノンペンホテルと、年季の入った建造物が並ぶ、市内やや北寄りのエリアにさしかかる。
プノンペンホテルのさらにやや北、モニボン通りを挟んで向かいにオフィスを構えるプノンペン証券(Phnom Penh Securities, PPS)は、株式会社上場の株式引き受けライセンスを保有する台湾系のカンボジア現地総合証券会社である。
2013年1月31日、PPSは証券口座を保有する投資家に対し、本来は昨年上場する予定であった台湾系縫製会社の最新上場スケジュールを、満を持してメール配信した。
名刺の肩書きに「CEO特別アシスタント」と書かれた、上場業務一切を取り仕切るその台湾系女性スタッフは、上記メールの発信タイミングに合わせて面談時間を予定していた筆者に会うなり、苛立ちと申し訳なさの入り交じった表情で冒頭のコメント。
昨年10月に面会した時、彼女の苛立ちの矛先はカンボジア証券設立委員会(Securities Exchange Commission of Cambodia, SECC)と商務省(Ministry of Commerce, MOC)に向いていたが、今の標的はどうやら上場予定企業自体のようだ。
昨年4月18日、プノンペン上水道公社(Phnom Penh Water Supply Authority, PPSWA)1銘柄のみを上場株式としてオープンしたカンボジア証券市場(Cambodia Stock Exchange, CSX)。