コンスタントにノーベル賞クラスの研究を生み出し続ける人がいます。ジョン・バーディーンはその典型ですが、実のところノーベル賞を2つでも3つでももらっておかしくない人物は、有名人にもそうでない人にもいるわけです。
アルベルト・アインシュタインなどは典型的で、かつ有名な人ですが、エジソンやフォン・ノイマン、ニコラ・テスラのようにノーベル賞と縁がなかった人もいるし、南部陽一郎先生のように80代になられてからようやっと1つ出るという人もいます。
また、フリーマン・ダイソンなど知る人は知り、日本社会の大半があまり認知していない、超弩級の知性の持ち主が、地球上にはそこそこの数存在しています。
そんな人たちの中でも、飛びぬけて生産的、かつ実際に手が動く人が複数回ノーベル賞をもらっていると思います。
マリー・キュリー、ジョン・バーディーン、フレデリック・サンガー、一度は平和賞なのでちょっと意味合いが違いますがライナス・ポーリング。これらの人はノーベル賞を複数回受賞しているハイパーな研究者たちですが、例外なく言えるのは、
●目の前の現象をきちんと捉え
●そこで、方法から開発して新たな業績を確実に生み出す
という目と手とアタマの3つがそろって動く人たちだということでしょう。
そんな当たり前のことを言わないで、優れた科学者なんだから当然でしょう、と言われるかもしれませんが、まあ待ってください。
と言うのも、科学史や科学哲学の本をめくればすぐ出てくるように、科学界を含む人類社会は様々な「目に見えないもの」を信じて、それで発展してきた経緯があります。ニュートンあたりの時代には、ものが燃えるというのは「燃素」フロギストンというものが介在すると多くの「専門家」が信じていました。
「周転円」の現象論
古代の天文学では「周転円」という不思議な概念がありました。どうしたものか、それに従って航路などを決定するときちんと正確に目的地に着いた・・・。
実はこの「周転円」は地球の自転公転を踏まえた正確な星の見方だったわけですが、オリオン座とかペルセウス座なんて命名した時代の人たちは、まさか地球が球体でぐるぐる回っているなんて夢にも思ってはいない。
コペルニクスもケプラーも、最初に習った天文学は、不思議な世界のメカニズムと思われた、ぐるぐる回る周転円で天文を習ったわけですね。で、あるときソレに気がついて「コペルニクス的転回」が起きた・・・。
それでも地球は回っている、んですね。で、根拠不明で不要な「周転円」モデルは必要なくなった。約30年前、天文を教えて頂いた杉本大一郎先生の講義で、最も印象深く感銘を受けた1つが、この「周転円不要の科学革命」の話でありました。