前回、桜宮高校の事件をネタにして、教師はマスコミ相手に戦えと申し上げました。ところが実際は、一部の親や生徒たちが立ち上がったようです。運動部のキャプテンたちの記者会見や、ツイッターでの同校関係者とおぼしき人たちの橋下徹大阪市長批判などを見ていると、まさか彼らは前回の拙稿を読んで戦う気になったのではないだろうなと考えたりもします。もしそうなら、光栄な話です。

 しかしながら、今回の親や生徒の動きを見ていると、橋下市長の判断は全面的に正しいと考えざるを得ません。なぜなら、桜宮高校の親や生徒たちは、自分たちがなぜ叩かれているのか、全く理解していないからです。

事態は思っていたよりも悪い

 筆者は、当初この事件を叱責のノウハウの使い方の失敗ではないかと思っていました。報道によれば、自殺した生徒の主将就任以後に体罰が激しくなったとされています。ビジネスマンならこんな叱責のノウハウをご存じでしょう。

 気の弱い部下を自分が直接叱責するのは部下を萎縮させると考えて、簡単にへこたれない1階級上の先輩を代わりに叱責する。

 先輩が叱られているのを見て、「これは自分が叱られているようなものだ」と気の弱い部下が気づいてくれればいい。叱責する方も、叱責される方も、やりとりを見ている部下が分かってくれることを期待して“演技”をするのです。

 それでも部下が分かっていないと、あとで先輩が「オレはおまえの代わりに怒られていたんだぞ。課長だっておまえが一番悪いことは分かってる」などと教えて、部下は上司の気の遣い方や、近い将来自分につくであろう部下の守り方を学んでいくのです。外国のことは知りませんが、日本ではごく普通に行われている人材育成法です(図1)。

 教師は、(少しの体罰も交えた)叱責のノウハウを自殺したキャプテンが理解していると考えて行使した。しかし残念なことに、キャプテンはノウハウを理解していなかった。そしてノウハウを教えてくれる人もいなかったがゆえに起こった悲劇ではないのか。そんなことを考えていたわけです。事件の経緯がこれだけなら、筆者は考えを変えなかったでしょう。

 しかし続報で、キャプテンが1日に30~40発も殴られていたこと。しかも周囲に問題の教師とは別にOBなど大人が見ていて放置していたこと。さらにそうした指導が行われていることを生徒も親も知っていて、なおかつ今なお教師が敬愛されていることを知ったところで、事態は思っていたより悪いと確信しました。

 さらに同校の運動部のキャプテンたちの記者会見や、運動部員たちの不祥事がネットに溢れた経緯を見て判断するならば、事態は最悪です。大津のいじめ事件の時よりも悪いと言い切ってもいいかもしれません。