「変えられる見込みがある問題から取り組んでいくんだ」

 これは、前回の記事でご紹介した私が今働いている社会変化を促すNPO、CPD(Center for Popular Democracy)で日常的に耳にするフレーズです。

 CPDは変化を起こしやすい地方レベルから政策を変え、その変化を各地に広げ、最終的に国レベルの政策に変化をもたらすという戦略を取っています。関わる利害関係者が多岐にわたる国に比べ、地方はその数も影響が及ぶ範囲も一定の地域に限定されるので、変化が起こしやすいのです。

 日本も例外ではなく、地方の方が政治を変えやすいと思います。教育、子育て、治安、高齢者介護といった問題は地方の政治で解決できる問題です。

 政治の専門家である政治家や公務員が解決策を考えればいい、という考えもあります。でも、身近な問題を一番理解しているのは政治家ではなく、実際に問題に直面している私たちなのではないでしょうか。

 もし自分の身の回りで同じように問題を感じている人たちと力を合わせ、変えられることから取り組むことができたら、そして問題が少しずつ良い方向に行くのを見られたら、楽しくないでしょうか。

 実際にアメリカの市民はどう動いて変化を起こそうとしているのか、お話しさせてください。

お金も影響力もない市民の武器は「人」と「連携」

ハリケーン・サンディーによる被害の早期回復を訴えるNPO連合が、ニューヨーク市議会前で開いた記者会見(著者撮影、以下同)

 政治の世界はお金を持つ人、つまり政治献金ができる人や組織の影響力が強いのはどの国でも残念ながらあることです。一市民が政治に対して無力なのはアメリカでも同じです。

 でもそこで政治を諦めることはありません。私たち普通の市民がお金に対し何で対抗するかというと、それは「人」です。多くの人が問題を懸念している、解決策を望んでいるということを示し、効果的で持続的な運動をしていくこと。

 アメリカではコミュニティーオーガナイズという、地域住民の人たちが力を合わせて政治家や政府に問題を伝え、話し合い、解決策を探っていく手法が20世紀中頃に考え出され、今は多くの人々が共に活動する方法として全米にその手法を取り入れるNPOが広がっています。