中国経済は2010年まで北京オリンピックや上海万博などの国際イベント関連の公共投資によって牽引され、10年にわたって年平均10%近い高成長を実現した。しかしそれ以降は成長率が低下し、2012年に入ると実質GDP伸び率は第1四半期が8.1%、第2四半期が7.6%、第3四半期が7.4%と急速にスローダウンしている。なぜ中国経済は急減速してしまったのか。

 中国政府の公式見解では、欧米諸国の金融・債務危機の影響による輸出の伸び悩みが一番の原因だという。しかし、2012年1~10月の貿易収支は1802億ドルの黒字で、前年同期比45.6%も増えた。国際貿易が景気減速をもたらした一番の原因ではないことは明らかだ。

 一方、専門家の間では、中国経済を牽引してきた人口ボーナスが終わりに近づいているとも言われている。確かに家電やエレクトロニクスの部品などのOEM生産を行う労働集約型の工場を見ると、労働力が不足しがちになっている。

 しかし現時点で、中国全体の40%の労働力は、GDPの11%に貢献する農業に従事している。今後、生産性の低い農業から生産性の高い製造業およびサービス産業への労働力の移動が続くと見られる。

 したがって、中国の景気が減速しているのは、外需が弱くなっているからでもなく、中国経済にとっての人口ボーナスが終わったからでもない。

温家宝の不動産規制政策が景気減速の主因

 端的に言えば、今回の景気減速は政策の失敗によるところが大きい。

 2009年、リーマン・ショックの影響を心配して、中国政府は急遽4兆元の景気対策を実施したが、そのほとんどが国有企業の懐に吸い込まれた。あとになって分かったことだが、国有企業はこれらの財政資金のかなりの部分を財テクに使い、不動産に投資した。結果的に2011年に入り不動産バブルが引き起こされた。

 不動産バブルは膨らみ続けると、マクロ経済に深刻な影響をもたらす。また、住宅価格が高騰し、低所得層がマイホームの夢を実現できず、深刻な社会問題に発展している。ちなみに、一般的に住宅価格は勤労家族の年収の6倍程度が適正と言われているが、中国の住宅価格はすでに25倍を超えてしまった。

 こうした不動産バブルの悪影響を心配して、温家宝首相は断固としてバブルをコントロールする姿勢を示し、不動産関連の融資を中心に商業銀行の信用創造を厳しく制限した。温家宝首相が進めたこの不動産規制政策こそが、景気の減速をもたらした一番の原因である。