南国新聞 2012年11月15日
え、なぜ今、と誰もが思ってしまうような唐突な発表が、今年10月20日にナズリ首相府相(法律・国会担当)からあった。(関連記事はこちら)
ローカル紙が一斉に一面トップ扱いで報じた。長年そうだったので、これから変更なく続くのだろうと考えていたのだが、一定量の麻薬を所持した者に自動的に死刑を科すと規定している危険薬物不正取引取締法(Dangerous Drugs Act)第39B条を改正し、死刑を廃止して25~30年の懲役刑に改めることを検討中だというのである。
死刑が科される一定量とは、たとえば、ヘロインであれば15グラム以上、大麻であれば200グラム以上、覚せい剤は50グラム以上である。
死刑制度廃止を検討している理由についてナズリ首相府相は、海外で麻薬犯罪に関わり死刑判決を言い渡されたマレーシア人が250人近くいて、これらの国々に刑執行をやめるよう要求するにはマレーシアが死刑適用を先に放棄しなければ説得力がないからと説明した。
ちなみに、マレーシアで刑が確定した死刑囚は930人にのぼる。そのうち麻薬死刑囚は約700人とか。報道では、すでに絞首台の露と消えた麻薬死刑囚は440人もいる。
ナズリ首相府相の言うのもわかるが、しかし、もし廃止されたら、今以上に麻薬をマレーシアに持ち込む者・シンジケートが増えるのではと心配する声も出よう。
そうでなくても、毎日のように、当局がどこそこで十万、百万、千万リンギ単位の麻薬を押収したとローカル紙が報じている状況である。
死刑制度があっても麻薬犯罪は減らないのだから廃止してもいいのでは、と主張したメディアもある。死刑制度があるから何とか麻薬の持ち込みが今ぐらいに抑えられているという主張も出てこよう。