11月5日から始まった毎年恒例の日米共同統合演習「キーンソード」で実施予定だった日米共同水陸両用演習が突然中止になった。当初の予定では、沖縄県の無人島・入砂島で陸上自衛隊・米海兵隊共同で離島「奪還」訓練が行われる計画だった。

中国への配慮で日米合同演習中止

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2010年に行われた日米合同軍事演習。先頭は米空母の「ジョージ・ワシントン」〔AFPBB News

 政府筋は中止の理由を「高度な政治判断」と説明しているが、報道によると尖閣諸島をめぐり、対立が激化している中国への配慮のため、野田佳彦総理が決断したという。

 早速、キャンベル米国務次官補が外務省幹部に、「理解しかねる」と強い不快感を示した。

 米国外交筋のみならず国防省筋も「中国を牽制するための訓練なのに、本末転倒だ」と疑問を投げかけたという。

 配慮を示せば、相手も分かってくれるというナイーブさは、日本国内のみで通じるものである。生き馬の目を抜く厳しい外交の世界では通用しないどころか、将来に大きな禍根を残す。

 過去、数々の外交事例で痛い目に遭っているにもかかわらず、国家としての教訓にはなっていないようだ。

宮澤談話、河野談話など過去の“思いやり”はすべて裏目に

 マスコミの誤報に端を発した「教科書書き換え騒動」で、教科書検定基準の中に「国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」という「近隣条項」を入れたいわゆる「宮澤談話」、あるいは官憲による強制連行の証拠はなかったにもかかわらず、あったかのような「配慮」を示した「河野談話」。

 いずれも状況は好転するどころか益々悪化し、大きく国益を損なう結果となっている。

 一昨年の尖閣諸島付近での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件でもそうだ。明らかな違法行為にもかかわらず、中国の強硬な反発にたじろいだ日本政府は、逮捕した中国人船長を処分保留で釈放した。漁船も返還、違法行為を撮影したビデオさえ公表しないという「配慮」を見せた。

 この「配慮」で日中関係は好転するどころか、日本は「脅せば譲る」というメッセージを与えてしまった。まさに痛恨のオウンゴールだった。尖閣国有化以降の中国の頑なな外交姿勢はこのメッセージが誘因となっている可能性がある。