2016年の夏季オリンピック・パラリンピックはブラジルのリオデジャネイロで開催される。招致活動でリオデジャネイロに破れた東京が2020年の開催地に再び立候補しているのは、ご存じの通りだ。

 現在、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」が、開催地が決定する2013年9月に向けて活発な招致活動を繰り広げている。東京でのオリンピック・パラリンピックの開催は、東日本大震災で傷ついた日本人を元気づけ、日本の復興の姿を世界に示すイベントとして、大きな期待がかかる。

 招致活動の取りまとめ役となる招致委員会評議会・事務総長を務めるのは、元外務省外務審議官、前国際交流基金理事長の小倉和夫氏である。

 小倉氏は、外交官時代にラケットを抱えて世界を飛び回り、今も週に1度はコートに立つというテニス愛好家だ。そこでJBpressでは、本サイト執筆陣の1人で、東京での五輪開催を熱望する元プロテニス選手の坂井利彰氏に、小倉氏と対談をしていただいた。テーマはテニスと五輪招致。以下、その対談の模様をお届けする。

スポーツが与えてくれる宝

小倉 坂井さんは慶應義塾大学のテニス部監督を務めていらっしゃいますね。いま慶應のテニス部はいかがですか。強いですか。

坂井 今年は団体で男子が全国2位でした。早稲田に勝って全国優勝することを目指して頑張っているところです。

小倉 あと、もう少しというところですね。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会・事務総長の小倉和夫氏(写真:前田せいめい、以下同)

坂井 はい。もちろん全国1位になることは大事なんですが、スポーツは勝ち負けだけではないということも学生たちに知ってほしいと思っているんです。

 戦前に慶應の塾長をされていた小泉信三先生(1888~1966)が、スポーツが与えてくれる3つの宝という言葉を残しています。1つ目が「練習は不可能を可能にする」ということ、2つ目がフェアプレーの精神、3つ目が良き友をつくる、ということです。テニス部では、スポーツを通じてそういう宝を残してほしいと学生たちに指導しています。

小倉 体を鍛えたり技術を身につけることはもちろん大事ですが、おっしゃる通り精神的なものを得ていくというのが、スポーツではやはりいちばん大事なことですからね。

坂井 はい、なかなか学生たちには伝えにくいんですが。

競技でもあり社交文化でもあるテニス

坂井 私はずっと競技としてテニスをやってきたのですが、テニスにはいろいろな側面があると思います。社交という側面も大きいですよね。