先月半ばに日本の学界や報道界の方々に同行してモスクワを訪問し、政治・経済両面にわたって多くのロシア側関係者の話を聞く機会を得た。彼らとの対話の中では、今年も例年に違わず、主要なトピックは日ロ双方の隣国である中国に関連するものであった。
だが、膨張する中国の観察が主だったこれまでとは、今年の内容はやや異なっている。言うまでもなく、尖閣問題が発生したことから、ロシア側からのコメントもこの問題に向かってきた。
尖閣問題で日本を擁護する声は聞こえない
中国の対日姿勢の背景や国内事情についての分析は、日本で我々が目にしている内外の諸分析と大きな差はない(従ってそのレベルは高い、としておきたい)ので、ここでは尖閣問題で彼らが日本をどう見ているかに話を絞りたい。
結論から言えば、概して日本を暖かく擁護するといったものではなかった。
モスクワ国際関係大学のルーキン教授は、「国内のさまざまなグループの意見を取り纏められない今の日本に、対外政策が存在するとは思えない」との厳しい先制打から始める。
同教授に言わせれば、尖閣諸島で2年前に起こった漁船衝突事件がその好例で、「ああした形で釈放するなら、最初から逮捕などしてはならないのであり、釈放してしまったから中国は日本が弱いと決めてかかり、最近の人民日報は、『日本を叩け、彼らは叩かれるだけ譲歩する』といった記事を出すに到っている」と説諭を垂れる。
それを敷衍した同教授の結論によれば、日中関係を危険なものにしているのは日本自身、ということになる。これにムカッときても、ここはこちらの気持ちをまず抑えるしかない。
国際社会では、自らを守ろうとする姿勢を示さねば、相手にいくらでも付け入る隙を与えてしまい、そうなれば結局それは自ら招いた災いでしかなくなる、という常識的な警鐘であることに間違いないのだから。
外交アカデミーの親中派で鳴らすバジャノフ学長は、1972年の棚上げの状態に戻すしかないだろう、としつつ、日本の尖閣国有化は挑発に映る、と中国の肩を持つ。
同学長によれば、最近モスクワにやって来た中国の軍事関係者の訪ロ団が、「なぜ日本は挑発してくるのか。中国が他国へ土下座する時代ではもうないのに、日本は以前と同じ接し方をしてくる」と怒りを込めて述べていたという。