アジア経済は血気盛んでその人口規模も大きいが、まだ世界的なブランドがあまりなく、懸念が広がっていると英フィナンシャル・タイムズが報じている。
ブランドコンサルティング会社の米インターブランドのランキングによると、上位100位に入るアジア企業はわずか8社で、この数はフランスと同じだ。世界68億人の半分が住むアジア圏が、人口6000万人のフランスと同じという状況になっていると指摘している。
トップ10に入ったのはトヨタの1社
8つのブランドとは、トヨタ、ホンダ、サムスン、キヤノン、任天堂、ヒュンダイ、パナソニック、レクサスと、日本と韓国のみである。この中でトップ10に入ったのはトヨタの1社。
記事によると、認知度を高めるためには製品の性能や品質、デザインや使い勝手などで高評価を得る必要があり、それには何年もかかる。韓国の企業は欧州や米国に大規模な拠点を持ち、現地の需要に合った商品開発でブランド力を高めているという。
しかしアジア圏の多くの企業は、まだこの段階に達していない。アジア企業は、まず生産に徹することから始め、製造能力の強化に努める。ある時点で、大きな利益を生まない単なる製造工場ということに気づき、自社ブランドをつくろうとするが、このやり方では非常に困難だという。
ただ、インドのタタ・グループが英国車のジャガーとランドローバーを買収したり、中国・吉利汽車が米フォード・モーターからボルボを買収している。また、中国レノボグループ(聯想集団)による米IBMのパソコンブランド「シンクパッド(Thinkpad)」の買収事例もある。
今後こうした買収が増え、中国やインドの企業による世界ブランド展開が加速するのではないかとフィナンシャル・タイムズの記事は伝えている。いずれも膨大な人口を抱える国内市場がある。国内でスキルを磨き、海外展開に発展させられるメリットがあるという。
海外進出を後押しする「走出去戦略」
興味深いのは、5月25日付の米ワシントン・ポスト。この記事では少し別の見方をしている。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」や米ナイキのシューズなど、世界的なブランドの製品が中国で製造されているが、同国には自国の世界的なブランドがなく、海外進出もうまくいっていないと報じている。