かつお節、刺身、たたき。様々な形で日本人が食してきた魚が、カツオだ。赤身だけでなく、あらゆる部位を人びとが食材にしてきたことを前篇で紹介した。
だが現代、カツオを冷凍して加工する工程では、電動ノコギリで赤身以外の部位は取り除かれる。赤身以外の骨、皮、血合などは、混ざり合った「削り粉」となり、人に食べられることはほぼなくなっている。赤身4割に対して食べられない部分は実に6割にもなる。
この現状に対して、静岡県水産技術研究所は、2009年度から2011年度にかけて「カツオ丸ごと食用化プロジェクト」に挑んだ。ほぼ食べられることなく飼肥料になっていた「削り粉」を、どのように食用化するのだろうか。
後篇では、このプロジェクトを推進した開発加工科上席研究員の平塚聖一さんに、取り組みの一部始終を聞いた。3カ年という短期間で「削り粉から作った食材が売れることを証明する」ことが、プロジェクトのミッションだ。
「食用でない6割の部分を食用に」
焼津市は冷凍カツオ全国一の水揚げ地。明治後期に、焼津の魚商人がカツオの鮮度保持のため氷を使ったところ、水揚げをする漁業者たちもカツオを船内の氷で冷やすようになった。船内急速冷凍装置が日本で使われだしたのは1930年代からだ。魚の加工業が多く存在する焼津は、加工に向いた冷凍カツオを水揚げするのに最適の水揚げ地となっている。
平塚さんは、このプロジェクトの大きな目標を、次のように説明する。
「日本の企業がカツオをたくさん買えるようになることが大きな目標です。いまや日本がEU、タイ、中国などと魚を買い争う時代。日本の企業が魚の購入資金を多く得るには、魚に、より価値を付けることが大切です。食用でない6割の部分が食用になれば、魚の価値は高まります」